係員が壁のボタンを押すと、搬入口のシャッターがゆっくりと上がった。
真夏の熱い空気と光が、天本と二号機が包んでいく。
ケーブルは、ギリギリ搬入口から数メートル先まで届いた。天本は車椅子を押して、シャッターをくぐり、外へ出た。
「おおー」
二号機が初めて見た本物の空は、どこまでも高い青空だった。「うは、眩しいっ」二号機は頭上に手をかざし、その影を顔に落としている。
残念ながら空は、木々と建物に切り取られて小さくなってしまったが、それでも二号機は嬉しそうに顔を右に左に向けて、見える限りの風景を目に焼き付けようとしていた。
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