大学1年生の歩き方

失敗上等!何度でも仕切り直そう

全てうまく行かなくたって、大丈夫。不真面目でも、正しくなくても、それなりに生きていけるのが、人生というもの。かつて大学生だったトミヤマユキコさんが振り返る、ダメなままでも、どうにか大学でやっていくための心構え。

「いつまでも新品みたいな人生はないのですから、使い込むほどに味が出る、ヴィンテージのような人生を目指すべきです。」

大学教員にとって一番大事な仕事とは?

これまで清田さんと一緒に大学1年生の歩き方について考えてきましたが、とうとう3月になってしまいました。大学1年生ももうすぐ終わりますね。

「1年間お疲れ様! 引き続きたのしいキャンパスライフを!」と明るく送り出したいところなのですが、最後の月だからこそ、ちょっと重い話をさせてください。

数年前、ある大学教員から、「わたしたちにとって一番大事な仕事は、研究でも教育でもなく、学生を死なせないことだ」という話を聞きました。

大学は研究機関であり、大学教員は研究者ですから、研究が大事なのは当たり前。そして、研究を教育という形で学生のみなさんに還元することも、すごく大事です。しかし、学生の心のケアも、教員の重要な業務になりつつあります。学生のメンタルなんてほったらかしだったわたしの学生時代には考えられないくらい、今はフォローが手厚い。高校までの「担任の先生と生徒」みたいな濃密な関係性を作って、ホームルーム等をこまめにやり、学生のちょっとした変化を見逃さないようにしている大学もあります。

というのも、大学に馴染めないことで、引きこもり状態になり、そのまま退学したり、ひどい場合は死を考えてしまうような学生がいるからです。そうした学生には「正しさ」を重視する真面目なタイプが多く、彼らは「適当にやり過ごす」ことがとても苦手。そのため、理想のキャンパスライフが手に入らないとわかった途端、それを取り返しのつかない「失敗」だと思い込み、自分を責めてしまうのです。

また「親の期待に応えたい」と思うあまり、辛さ苦しさを吐き出せない学生もいます。心身共にしんどくて、しばらく大学生を休みたいけれど、親に理解してもらえそうにない、と言った悩みを、わたしもよく聞きます。親をガッカリさせたくないと考える「家族思いの良い子」ほど、ストレスを溜め込み、心のバランスを崩してしまう。これもよく見るケースです。

何度でも仕切り直せる場所、それが大学

レールを外れることなく真面目に学び正しく生きることだけを正解とする考え方は、自分の心を硬直化させる、非常に危険なものです。もちろん、真面目な人が報われることは、いいことですし、正しいことです。でも、不真面目でも、正しくなくても、それなりに生きていけるのが、人生というもの。授業に全然出て来ないくせにテストでいい点とる学生とか、グループワークではまるで役に立たないのに、飲み会の仕切りだけはやたらと上手い学生が、もしも大学から消えてしまったら、そこはもう正しさによって支配された地獄でしかありません。清田さんが「関節がガチガチに固い人」を例に、衝撃を吸収するクッション的なものがないのは危険だ、と指摘していましたが、ダメな学生、ちゃらんぽらんな学生というのは、まさに大学を豊かな空間にするための、クッションみたいなものなのです。メンタルが弱い学生だってそう。いていいどころか、いてくれなきゃ困る存在なのです。

わたしは大学を多様性について学ぶ場だと思っています。「人と同じじゃなくてもなんとかなる」ということを、4年間かけてリアルに体感することが、卒論を書き上げるのと同じくらい大事だと思うのです。学問に触れたいと思う気持ちがほんの少しでもあれば、優等生じゃなかろうが、ぼっちだろうが、留年していようが、構わない。どんな奴がどんな風に学ぼうと自由。それが大学のあるべき姿だと思います。

この本は「なんでも要領よくこなせるキラキラ学生は相手にしない」というコンセプトで書かれています。わたしたちがこの本を届けたいのは、自分に自信がなく、1年生の終わりになってもまだ「大学に馴染めない」とか「大学デビューに失敗した」とか思ってクヨクヨしているタイプの人。グーグルの検索窓に「大学 つまらない」とか入れてこっそり仲間を探しているような人にこそ、この本を読んでもらいたいのです。

繊細であるがゆえに、いろんなことに傷つき、落ち込んでしまう学生に言いたいのは、「大学生活って何度でも仕切り直せるもんなんだよ!」ということ。自分を好きになれないならキャラ変してもいいし、授業がつまらないなら転部してもいいし、大学自体を好きになれないなら、卒業することだけを目標に、ほとんどの時間を学外で過ごしたっていい(じっくり考えた上でなら退学することだっていいかもしれない)。自分はこういう人間だと決めつける必要もなければ、大学生はこうあるべしと型に嵌める必要もありません。むしろ、どんどん変わっていけばいいし、もっと自由でいい。自分に一貫性がないことを、あまり恥じないでください。

いつまでも新品みたいな人生はない

なぜわたしが「みんなもっと自由でいい」と言うのか……。

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大学1年生の歩き方 先輩たちが教える転ばぬ先の12のステップ

トミヤマユキコ,清田隆之,死後くん
左右社; 46判並製版
2017-03-27

この連載について

初回を読む
大学1年生の歩き方

トミヤマユキコ /清田隆之(桃山商事)

「失敗しても大丈夫!」な人生の歩き方とは? 早大助教のトミヤマユキコと、恋バナ収集ユニット桃山商事の清田隆之が、仕事や恋愛、お金やコンプレックスの話まで、自身の黒歴史をさらしつつ語ります。「キラキラしたいわけじゃないけど退屈な学生生活...もっと読む

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コメント

guriswest なんとかぁなる。ほんとこれ。生きてるだけでまるもうけだい 6ヶ月前 replyretweetfavorite

sayusha 新生活がうまくいかなかったと落ち込んでいる人にも、これからの新生活にワクワクドキドキしている人にも読んでほしいエッセイ。この本のメッセージは、3月のおふたりの文章に詰まっていると思います。(も) https://t.co/Gb6RsU3A66 6ヶ月前 replyretweetfavorite

toripi0214 いいな。1~2回生だった頃の自分にじっくり聞かせてあげたい内容。 6ヶ月前 replyretweetfavorite