本当に安く買えたかどうかは、買ったときにはわからないもの
自分の欲望と向き合って、本当に欲しいもの、いるものだけを買う、これが、無駄なお金を使わない王道です。
前回、バーゲンで買うことをやめ、正価で、つまり高くものを買う訓練をしてください、 とも書きました。
しかし、私は、割引になったものを買ってはいけないと言ってるわけで はありません。
バーゲンは大いに利用していただいてもかまわないのです。
……? と思われた方もいると思うのですが、私は安い買い物をすることと、安く買うこととはだいぶ違うと思っているだけです。私は、安い買い物をしてもらいたいのです。
バーゲンで「半額!」と値段が割り引かれていると、商品を買うときに考えなくてはならないことがおろそかになり、買い物をするときの基準が甘くなり、必要ないもの、たいして欲しくないもの、使わないかもしれないものまで買ってしまうことが多いからです。
それは、安く、高い買い物をしていることにほかなりません。
私は、安く買い物をすることにこだわることをやめて、安い買い物をしてほしいのです。
どう違うのでしょう?
わかりやすい例でお話ししましょう。
バーゲンで半額になったお買い得商品の5000円の洋服と、バーゲンになっていない1万3000円の洋服があったとします。もちろん、商品は別物です。
1万3000円の洋服を買うとしたら、それは気に入ったからだと思います。
バーゲンになっていないぶん、十分、吟味もすると思います。
バーゲンで半額になったものは、商品は悪くない、まあまあ。何より安い、半額! だから買う。
この買い方は、よく考えてみると、商品よりも値段が安いことに気持ちが引きずられたという可能性がありますよね?
では、買ったあとはどうなるでしょう?
商品を十分気に入って買った値引きなしの1万3000円の洋服は、50回着ました。
安さにひかれて買ってしまった5000円の洋服は、5回しか着ていません。もう、タンスの肥やし状態です。
50回着た洋服は1回につき260円、5回しか着てない洋服は1回につき1000円のコストです。
それも、260円のほうは気に入った洋服なのです。
どちらが安い洋服を買ったのでしょうか?
商品の値段は、買ったときに高い、安いと思うものですが、本当に安かったかは、あとになってから決まるものなのだと思うのです。
1万3000円の洋服は高く買ったけれども安かった。
商品について妥協して半額になった5000円の洋服は安く買ったつもりだったけれども、結局は高くついたわけです。
これこそやめてほしい買い方なのです。
また、洋服に関しては、購入するときにもうひとつ考えたいことがあります。
それはメンテナンス費用です。
同じ洋服でも、クリーニング店に出さなくてはならないもの、自宅で洗えるものがあります。
素材や装飾の有無などから、どういうメンテナンスが必要なのか想像する必要もあります。
商品は、買ったときだけでなく、使っているうちに追加費用が発生するものがあるのです。
たとえば、家電製品もそうですね。
私がものを買うときのルールにしていることを、お話ししていきたいと思います。
それは、私の人間性や人生観、心のうちをさらけ出すようで恥ずかしいのですが、正直にお話しします。
そして、賛成の部分も反対の部分もあると思います。絶対的な答えではありません。
ただ、みなさん自身で、ご自分の買い物についてのルールやこだわりを考えていただきたい。そのときに、私の考え方もひとつの材料に、いや、踏み台にして、無駄のない安くつく買い方を考えるヒントにしてもらいたいのです。
まずは洋服のことを取り上げてきたので、衣類のことに戻ります。
私はバーゲンやアウトレットに行き、値引きされた衣類を見るときに、自分に問うことがあります。
値惚れで買うことを避けるために、値札を見る前に「割引前の正価でも買いたい洋服か?」と問います。「いくらだったら買いたい洋服か」とも考えます。
バーゲン価格でも、正価で買うときと同じようにこだわり、欲望と向きあって、本当に気に入った何度も着る洋服をバーゲンで買うことができれば、それがいちばん賢い買い方になると思うからです。
そして、申し上げたいこと。いろいろとありますが、まず、バーゲンになっている商品というものは、正価で売り尽くすことができなかったから、バーゲンになっているということ。
そして、中には最初からバーゲン向け商品として用意されるものもある、ということです。
すべて1万円圴一の冬物コートセールがあると、洋服の中をまさぐって値札を探しませんか?
元はいくらだったのかしら、と。値札に3万円などと書かれていると、嬉しくなってしまいます。
でも、それよりは素材や縫製はしっかりしているかの確認や洗濯方法の注意書きのほうが、はるかに重要です。
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