それについて自分から言いたくなる」ものを意識して作る 菅俊一×伊藤ガビン対談【第3回】

“アイデアの種は、あなたの日常の「小さな違和感」に隠れている”ーー。こんな帯文が目を引く書籍『観察の練習』(NUMABOOKS刊)は、表現研究者・映像作家の菅俊一さんによる初の単著。本のタイトルにもなっている「観察」とは、著者の菅さんにとって一体どのような行為なのでしょうか。 cakesでは、編集者の伊藤ガビンさんを聞き手に迎えて展開したトークイベントの模様を、全3回にわたってお届けします。(『観察の練習』の本編はこちらに特別掲載中。)

[写真→文章]を繰り返していくフォーマット

伊藤ガビン(以下、伊藤) それでは、本の内容について聞いていきましょう。
 まずこのフォーマットですね。1つの見開きに1つの写真があって、次の見開きにはテキスト。文字数もだいたい同じ。こういうフォーマットにしようと思ったのはどうしてですか?

菅俊一(以下、菅) そもそも、そんなに長い文章を書くのが得意じゃないんですよね。ライターみたいに何千字をばっと書く、ということができない。論文は緻密に章立てしてロジックを立てて、1行、1章の文章量を決めて構築していくから建築みたいに書けるんですが。だから数百字くらいの、どの単語を使うのか、どういうリズムで句読点を入れるかも管理できる、自分の範疇で収まる文量にしました。

伊藤 ページを1ページずつめくっていくっていうことが、ある種の筋トレ的なルーティンになっている、という作られ方でしょうか。

 写真を文章よりも前にしたのは、文章が自分の解釈の答え合わせになっているような感覚です。別解もたくさんあるし、読者にはそうじゃない解釈についても考えてほしい。

伊藤 別解、すごく楽しいんですよね。この本の一番最初に載っている写真の菅さんの見立ては、水が流れた瞬間に道がデコボコしていることがあからさまに可視化されたということですが、僕は、ホームベースだと思いました。


『観察の練習』p.10-11より

 この形が。なるほど。

伊藤 ここはブラジルの貧民街ですよね。サッカー選手になるしかこの世界から抜け出すための道はない。そこでみんながサッカーをしているときに、1人だけ野球がやりたいっていう少年がいたんです。普段はみんながストリートを占拠しているから、雨が降った日にしか野球ができない。そこで、ここにダンボールで作ったホームベースを持ってきて、彼が1人で野球をやって、泣きながら帰ったあとの写真がこれなんです。

 あ、ホームベースの跡なんだ。

伊藤 そんなふうに、いくらでも切り口はあるなと思って。物語喚起の方向で持っていくと、全部そういうふうに見れる。ストーリーを作りたい人がこういうものを1個ずつ作っていくと、引っ掛かりがあって面白い。

 人間って勝手に意味を見出しちゃうので、無意味な状態でいることってかなり難しいんですよ。そういうところが面白いんですよね。

予定調和になることをどれだけ避けられるか

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アイデアの種は、あなたの日常の「小さな違和感」に隠れている――。

観察の練習

菅 俊一
NUMABOOKS
2017-12-05

この連載について

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観察の練習

菅俊一

“アイデアの種は、あなたの日常の「小さな違和感」に隠れている”ーー。 こんな帯文が目を引く書籍『観察の練習』(NUMABOOKS刊)は、21_21 DESIGN SIGHT「単位展」「アスリート展」などで展示のディレクションに携わり...もっと読む

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rindarinda5 バーコードを帯に付けるの良いな。初めてこの本買った時の、手触り感とサイズ感は確かに誰かに言いたくなったかも https://t.co/FXuzsn4eDJ 9ヶ月前 replyretweetfavorite

mrmgn56 その商品すごいんだよと言いたくなるものを。 https://t.co/fatt6YXRrx 9ヶ月前 replyretweetfavorite