古典をもっとおもしろく読みたいあなたへ
『恋する伊勢物語』俵万智
(筑摩書房)初出1992
時間 VS 言葉
私の人生を変える恋のきっかけになった一冊です! 古典なのに、不倫ありナンパあり格差婚ありの恋愛パターン詰め込み集。#「伊勢物語」に関するエッセイ #歌人・俵万智による解説 #高校のときによくわからなかった古典をこんなにおもしろいものだったんだって教えてくれる #受験生もぜひ! 古典常識が身につく! #古典ってとっつきにくくて苦手だ〜という方にこそ読んでほしい #私の人生を変えた一冊
大げさなんかじゃなく、「人生を変えられた本って何かある?」と聞かれると、私は迷わずこの本を差し出す。『恋する伊勢物語』。―え、なんでこの本? と首を傾げられそうだけど。
真面目な話、世の中、愛がなければやっていけない。これを好き! って思う気持ちはいつだって強いエネルギーだ。
だけどその愛はどこから生まれるのか? と聞かれたらすこし困る。
本当に好きなものというのたいてい好きな理由が答えられないし、なんでそれを好きになったのか、と聞かれても困る。だ、だって好きなんだもん……最高じゃん……ともごもご口を動かすしかない。せめてその素晴らしいところを伝えたくて、私はこうしてあなたに向けて文章を書いているけれど。
そんなとき、ふいに私と同じものを好きな人に出会うことがある。
最初はぎょっとする。ま、まさかこの世に私と同じコレを好きな人がいるなんて!? そしておそるおそるその人の視線を覗いてみると、本当にそれを好きだとわかる。きらきらした目線で、私と同じものを見ている。うわ、そんなまさか、同志がいたのか!? この世に!? 本当に!?
そして気がつく。「え……もしかしてコレが好きな同志って、行くところに行けばもっといっぱいいるんじゃないか?」。
そうだ、コレを好きだと思う人がたくさんいそうなところに行けば、私は、この愛をひとりでもごもご完結させるだけでなくて、誰かにぶつけることができるのではないだろーか!?
もしかして、私、孤独じゃなくなる!?
(個人的に)私の人生を変えた一冊
そんなわけでこの『恋する伊勢物語』という一冊は、私が高校生のときに初めて伊勢物語に対する愛を共有した運命の相手であり、「もしかして大学の文学部という場所に行けばもっと伊勢物語について語ることのできる人が見つかるのでは!?」という発想に至った運命の一冊である。
……いちおうこの本のコンセプトは「(あなたの)人生を狂わせる本」のセレクト50冊であり、たぶん伊勢物語に運命を感じる人はわりとマイノリティであり、それがあなたである可能性は極めて低いわけだが、まぁ、一冊くらい完全に個人的な本があっても……許されるのではないだろうか……という目論見のもとに入れた一冊である。
ごめんあそばせ。興味のない方は華麗にスルーしていただければ幸いである。
というわけで『恋する伊勢物語』だ。
日本の古典「伊勢物語」を現代語訳したこともある歌人・俵万智が、伊勢物語の解説を一段ずつエッセイ調で書いていったのだが、その解説たちをまとめた一冊。
しかし解説といってもまったく堅苦しくはない。どっちかっていうと
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