ここまで説明した方法で、いろいろなアイデアをメモした後は、その中から、企画に落としこめるアイデアを選び出す作業になります。質より量でたくさん出したアイデアのほとんどは、使えないアイデアです。この中から、「欲しいと思う企画になるアイデア」をピックアップします。 初めに言うと、この「選び方」は、3つのフィルターを通して行います。
1.企画の具体的イメージが「スルッと」湧くアイデアを選ぶ
2.自分が欲しいと思うアイデアを選ぶ
3.他人に欲しいかどうか聞いて、反応速度を見る
では、順に説明していきましょう。
1.企画の具体的イメージが「スルッと」湧くアイデアを選ぶ
たくさんのアイデアが並ぶ中で、一番初めにかけるフィルターは、「そのアイデアが形になった時のゴールの絵がわかりやすく見えるかどうか」です。 結局、どんな企画にせよ、それを利用してくれるユーザーに、どれだけシンプルに伝わるかが、とても重要です。 「実現させる企画」に落とし込むまでに、編集が大変そうだったり、練り上げるのに時間がかかりそうだったりするアイデアは、そもそも企画の原案としてパワーの弱いアイデアです。アイデアの時点で持っているパワーの強さが、最後に大勢のユーザーを巻き込めるかどうかにつながります。
たとえば、この連載の第4回で例に出した、「勉強すればするほどほめてくれるペンケース」×ランダムワードのかけ合わせメモの中に、「勉強するとおやつをくれるペンケース」というアイデアがありました。 これは、イメージとしては、勉強中疲れた時に、ペンケースがチョコレートやキャンディなどを「コロン」と出してくれる、というようなもので、実現すればもしかしたら欲しがる人もいるかもしれないアイデアではあります。 しかし「どんな形で、どんな仕組みで、一体どうやってつくるの?」というイメージがすぐに湧かず、考えるのも開発するのも大変そうだということに自分でもすぐ気がつきます。ペンケースの中におやつを入れるイメージも、ちょっと衛生的ではありません。
その漠然としたコンセプトのアイデアだけで、実現したら「絶対欲しい!」と強く思えるのであれば、まだ可能性はありますが、絶対欲しいとも思えません。 このように、イメージが湧かないし、そこまで欲しいものになりそうにもない、というアイデアは、なんとなく面白そうであってもピックアップしません。
こうしてアイデアを見ていくと、まさに「スルッと」最終形がイメージできてしまうアイデアが見つかります。 たとえば、同じメモの中にあった「エールを送ってくれるペンケース」というアイデアは、個人的には具体的イメージがスルッと湧きました。 使う時にファスナーを開けると、それが口のように見えて、スピーカーから出る音声で、いろいろな声をかけてくれるものです。頑張りをほめてくれたり、励ましてくれたり。他にもいろいろと面白い言葉を考えられそうです。
言葉でアイデアを考えただけの段階で、自分の中で具体的なイメージが湧くアイデアは、企画になりやすく、かつ伝わりやすい企画になっていく可能性があります。
2.自分が欲しいと思うアイデアを選び出す
次の段階として、ピックアップしたアイデアが、自分自身が欲しいものであるかどうかでフィルターをかけます。 自分がつくる企画は、自分自身が欲しいと思うものでなければなりません。そのアイデアが、自分が心から欲しい企画として完成させられそうかを改めてイメージします。
自分が欲しい、という評価基準を設ける理由は、この世に一人のユーザーが確実に存在するということを確認するためです。 その一ユーザー(自分)が欲しくてたまらない企画になっていれば、他にも自分と同じように、その企画のユーザーになりたい人は存在するはずです。