気づき」の技術は鍛えることができる 菅俊一×伊藤ガビン対談【第2回】

“アイデアの種は、あなたの日常の「小さな違和感」に隠れている”ーー。こんな帯文が目を引く書籍『観察の練習』(NUMABOOKS刊)は、表現研究者・映像作家の菅俊一さんによる初の単著。
本のタイトルにもなっている「観察」とは、著者の菅さんにとって一体どのような行為なのでしょうか。 cakesでは、編集者の伊藤ガビンさんを聞き手に迎えて展開したトークイベントの模様を、全3回にわたってお届けします。
(『観察の練習』の本編はこちらに特別掲載中。)

1日1個の気づき

伊藤ガビン(以下、伊藤) そういうところから始まって、今はどういう感じで「観察」しているんですか?

菅俊一(以下、菅) 今は「毎日1個は気づこうかな」くらいの気持ちでやってます。

伊藤 ちょっとすごいこと言いましたね。「1日1個気づこうかな」って思って気づいてる人、あんまりいないと思います。

 一応生きているので、前に進んでおきたい気持ちがあるんです。昨日よりマシになって、生きている甲斐があるようにしたい。自分へのプレッシャーじゃないですけど、タスクとして新しいアイデアを思いつくとか、面白い気づきを得よう、ということをしています。

伊藤 やっぱり、武井壮がテレビ出演の後にホテルからまたちょっと走りに行く、みたいな感じなんですかね。

 無理してやってるわけじゃないですよ。義務化はしてますけど、歩けば気づくというか。

伊藤 「歩けば気づく」……すごい境地ですね。だけど、菅さんのこの本を読んでから、「ちょっと俺も気づいとこうかな」と思って歩くと、いろいろ気づくんですよね。気づこうと思って歩くと気づくものなんだなあ、と気づきました。  
 でもそうやってずっと気づき続けていると、「この気づき知ってる」みたいな、同じパターンを見つけることもありますか?

 その場合は、パターンが増えていいと思っています。この本でも「痕跡から推測する」とか「世界の中から構造を発見する」というふうに章に分けていますが、集めるときはどういう概念なのか、構造なのか、意識はしないです。とにかくまず集める。今回は8つに分類していますが、他の分け方もあるかもしれないですね。データベースが集まって、その精度が高まるのは全然アリだと思います。

伊藤 「いつでも気づいてる」人って、ちょっと怖い感じしますけど。

 人と話すときにもわかります。「この人はきっとこういう考えを持っていて、こういう癖があるからきっとこのポーズで聞いてるんだろう」ということは、気づくけど言わなかったり。

伊藤 気づいたことはどうやって記録しているんですか?

 スマートフォンで写真を撮ったり、メモ帳に書いたり。メモ帳には殴り書きで雑然と。とにかく記録をしていくことが重要なので。

伊藤 菅さんには、文房具オタクの側面はありますか?

 ありますよ(笑)。ただ普段はコクヨの、コンビニでも買える安いノートをポケットに突っ込んで、ペンは何でもいいのでボールペンを適当に使っています。

伊藤 どういう内容のメモを取るんですか?

 例えば、ある病院の自動精算機で言われる「お大事に」っていう声と、出張で泊まったホテルのチェックアウトの自動精算機の声が同じ人だったんです。これはメーカーが一緒なのかもしれないなとだとすると、もし、そのメーカーの自動精算機のシェアがかなり高いのであれば、日本で一番声を聞かれている人って、機械にビルドインされた声なんだろうな、とか思ったりしてます。

伊藤 そういうことをメモってるのやばいっすね。

 基本的には、どうでもいいことなんですよ。  
 この前、金沢でおでんを食べたんですが、からしをつけたときに「これはもしかして舌に触らなかったら全然辛くないのかも?」と思って試したらやっぱり辛くなかった。やっぱり舌に触れないと意味ないんだな、とか。お寿司の醤油とかもそうですが、効率よく舌に触れるようにすれば、だいぶ少量でもいけるんだろうなって思ったりとか。

伊藤 ああー! そういうことって、僕もすごい考えてました。子供の頃、ジュースってこれ表面だけ味がついていればいいんじゃないか、とか。でもメモはとってないな。

 そういったくだらないことでも、一応書いておくと、それが何かのヒントになるかもしれない。今はわからないので、未来に向けて書いてる感じですね。

伊藤 それ聞いてラッパーのリリック帳を連想しました。僕は今年「ラップ・ミュージアム」(市原湖畔美術館で2017年8〜9月に開催された企画展)にちょっと関わったんですが、そこでいろいろな人のリリック帳を見せてもらったんです。すごく面白いんですよ。常にそれを考えてる人がメモっていることって、誰のものでも面白いですね。あとメモをとるってって作業自体はすごく地道な作業じゃないですか。ラッパーという存在感とは全然違う。

 小さい字でびっしり書きますからね。

伊藤 クリエイティブ関係の仕事って派手に見られがちだけど、やってることはメモをとるとかそういう地味なことの積み重ねだったりしますよね。そのメモが、菅さんの場合は、ライム(韻)じゃなくて「気づく」という方向に行ったと。

 ライムに行ってたら、ちょっと違ってたんでしょうけどね。書きなぐったメモは毎日考え直して、整理して1日1個書いています。

伊藤 すごいね。イチローだねやっぱり。素振りの回数がすごい。

 それをずっとやってるので、1年で300とか400とか気づきます。それを10年やったら3000ぐらい気づいていく。溜まっていくこれらの気づきは貯金ですね。

技術は鍛えることができる

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アイデアの種は、あなたの日常の「小さな違和感」に隠れている――。

観察の練習

菅 俊一
NUMABOOKS
2017-12-05

この連載について

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観察の練習

菅俊一

“アイデアの種は、あなたの日常の「小さな違和感」に隠れている”ーー。 こんな帯文が目を引く書籍『観察の練習』(NUMABOOKS刊)は、21_21 DESIGN SIGHT「単位展」「アスリート展」などで展示のディレクションに携わり...もっと読む

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コメント

profetbird23 7/27から約3週間。俺の気づきのパターンは3つ。1.他との比較 2.事象を遡る 3.細かくして観る 。もっとサンプルを増やせば気づける事が増えるかも。 1年以上前 replyretweetfavorite

profetbird23 3日程やってみた。水漏れとか、蟻の巣がバス停にある。そんなレベルだけど意外と気づく。 1年以上前 replyretweetfavorite

profetbird23 とりあえずやってみるか。 1年以上前 replyretweetfavorite

showgo https://t.co/lwRpZ7uIQq 2年弱前 replyretweetfavorite