学生時代に繰り返し聞いた音楽を偶然、耳にすると、当時つきあっていた彼氏彼女のこと、その時に受けていた授業や先生のこと、使っていた歯磨き用のコップのこと、通学で使っていた駅の駅員のことなど、およそ音楽に関係ないことまで次々と思い出すことってありませんか? ぼくはビートルズの『ラバー・ソウル』を聞くと、別の中学校に転校したばかりなのに、このアルバムを貸してくれた親切な同級生のことを思い出します。そう書きながら、久しぶりにこのアルバムを聞き始めてしまいました。2曲目の「ノルウェイの森」を聞くと、すぐに高校生の時に読んだ村上春樹の『ノルウェイの森』のことを思い出しました。おもわず全部聞いてしまいそうなので、とりあえず音楽を止めます。
さて、このように人間って、いろんなこと事細かに覚えていたりします。それにも関わらず、忘れてはいけないこと——切れた醤油を買うとか、学生の推薦書を書くとか——をすっかり忘れてしまうことも多々あります。困ったものです。
なんでこんなことが起こるのでしょうか。記憶には短期記憶と長期記憶の2つがあることが、どうやら理由のようです。今回は、この2つについて考えてみましょう。
短期記憶とは、現在、使っている情報についての短期的な記憶です。つまりすぐに忘れてしまいます。例えば、電話で予約をしたレストランの電話番号は、その瞬間は憶えていても、すぐに忘れますよね。
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