専業主婦になりたくてなったわけじゃない! 彼女たちの言い分。

出産を機に会社を辞めた女性に理由を訊くと、第一位は「子育てに専念したいから」ではありません。「仕事への不満」や「行き詰まり感」です。なぜそうなるかというと、日本の会社は、形式的には男女平等でも、残業できない女性社員を「差別」しているからです。彼女たちは、望んで専業主婦になったわけではないのです。話題の『専業主婦は2億円損をする』から特別連載。

話題沸騰!

『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)


「マミートラック」という余計なお世話

「日本の会社は江戸時代」というのはショッキングですが、経営者はこれを真っ赤になって否定するでしょう。「女性社員が活躍できるようにがんばっているのに、江戸時代とはなんだ!」というわけです。
 そしてこれは、あながちまちがいとはいえません。ある要素を調整すると男女の格差はなくなって、大卒の女性も男性社員と同じように出世しているからです。

 その要素とはなんでしょうか。それは「就業時間」です。

 日本の会社ではずっと長時間の残業やサービス残業が問題になっていますが、一向にあらたまりません。なぜこんなかんたんなことができないのでしょうか。
 それは、「日本の会社は残業時間で社員の昇進を決めている」からです。

「そんなバカな!」と思うかもしれません。でも就業時間を揃えると、大卒女性は男性社員と同じように昇進しているのです。
 これは、「日本の会社は社員に“滅私奉公”を求めていて、社員は忠誠の証として残業している」ということです。まさに、時代劇に出てくる「殿様」と「家来」の関係です。

 近代社会では、労働者は会社と契約を結び、労働を提供するのと引き換えに報酬を受け取ります。日本の会社も形式的にはそうなっていますが、実態は江戸時代の「イエ」にちかい組織で、いったん正社員になれば人生のすべてを会社に捧げ、会社はそれにこたえて、生涯にわたって社員と家族の生活の面倒をみる、という関係になっているのです。

 正社員(イエの一員)はかつては男性だけでしたが、いまでは女性も加わることができるようになりました。これはたしかに進歩ですが、しかし女性がイエの一員として認められるには、無制限の残業によって滅私奉公し、僻地や海外への転勤も喜んで受け入れ、会社への忠誠を示さなければならないのです。
 そしてこれが、「子どもが生まれてもはたらきたい」と思っていた女性が、出産を機に退職していく理由になっています。

 日本の会社は、幼い子どものいる女性社員のために、「マミートラック」と呼ばれる仕事を用意しています。「男性や独身女性と同じように働かせてはかわいそうだ」との配慮からですが、残業しなくてもいいマミートラックでは忠誠心を示すことができず、イエの一員とは認めてもらえません。当然、給料も減るし昇進もできないでしょう。
 これまで対等の関係だったのに、いきなり二級社員のように扱われ、同期ばかりか後輩にも追い抜かれていくというのは、優秀で真面目な女性ほど耐え難いでしょう。

 こうして彼女たちは、ちから尽き燃え尽きて、専業主婦になっていくのです。

「こんなはずじゃなかった」

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専業主婦は2億円損をする

橘玲

マスコミから取材殺到、大反響! 新しい働き方と生き方を提案する、話題の書から特別連載。「仕事疲れた、専業主婦になりたい」。そう思っているあなた、ちょっと待って。会社は辞めても、仕事をやめてはいけません。妻が専業主婦というあなた、このま...もっと読む

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コメント

showgo https://t.co/HNlYyQDH3U 2年以上前 replyretweetfavorite

oomikoukou 日本の会社は、形式的には男女平等でも、滅私奉公できない女性社員を「差別」しているからです。 2年以上前 replyretweetfavorite

dorian5963 数少ない管理職の女性って殆ど独身で、男のように深夜もがむしゃらに働き続け、育児や介護経験もなく、自分の時間を全て仕事につぎ込めるような人ばかり。  2年以上前 replyretweetfavorite