17.相談は陰謀。相棒はミツホシグープの創業イワサキ家五代目
私はケータイを耳に当てた。
「ああ、ムヒョウだが、イワサキ会長に耳寄りなお話があるのですよ。お訪ねしてよろしいか」
「お待ちください」
小鳥のような声の秘書。
電話がつながると、明るい声があった。
あいさつも抜きで、イワサキ君は言った。
「それは楽しみですね。いつでもいらっしゃってください。社長を辞めてから、私は窓際ですからな。ヒマです」
以心伝心、同じ事を考えているかどうか、楽しみでもある。 次の日の遅い午後、イワサキ君を訪ねた。
お堀通りに面するミツホシ本社ビル、21階にある役員フロア。猫が喜んで昼寝をしそうな毛足の長いカーペットがいちめんに敷かれている。ロビーの東側は全面ガラスで、新装なった東京駅を見おろすことができる。夜景がなかなかロマンチックだ。瞬く都会の灯に美人秘書と窓際に並んでみれば、青く切ない恋を思い出す
社長室と会長室は皇居を見渡す西側に隣り合っている。私は景色をひと通り愛で、会長秘書室の美人、香山香澄嬢に目配せした。聖心女子大卒、元ミスインターナショナル候補の才媛。こちらの美女とも以心伝心の仲である。
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