カイジ「命より重い!」お金の話【第6回】 「うまい話」は経済学的にあり得ない

「世の中においしい話などない」と誰もが"理解"しています。しかし、毎年毎年多くの人が詐欺の被害にあっています。 警察庁の発表によると、2012年に認知された振り込め詐欺の被害額は、前年比27.1%増の161億6,277万円で、3年連続で増えました。件数は2.7%増の6401件で微増、しかし1件当たりの平均が272万円で27.7%増と、大幅に「高額化」しています。

漫画『賭博黙示録 カイジ』とは?
自堕落な日々を過ごす主人公、伊藤開司(いとう・かいじ)。そのカイジが多額の借金を抱えたことをきっかけに「帝愛グループ」をはじめとする黒幕との戦いに挑んでいく大人気漫画。命がけのギャンブルを通じて、勝負師としての才能を発揮するカイジだが、その運命は果たして・・・。(作者:福本伸行 講談社『週刊ヤングマガジン』で1996年11月号~1999年36号まで連載された作品)

木暮太一 カイジ「命より重い!」お金の話【第1回~第4回】はこちらからご覧下さい
木暮太一 カイジ「命より重い!」お金の話 【第5回】はこちらをご覧下さい

"うまい話"は経済学的に、あり得ない

「世の中においしい話などない」と誰もが"理解"しています。しかし、毎年毎年多くの人が詐欺の被害にあっています。

 警察庁の発表によると、2012年に認知された振り込め詐欺の被害額は、前年比27.1%増の161億6,277万円で、3年連続で増えました。件数は2.7%増の6401件で微増、しかし1件当たりの平均が272万円で27.7%増と、大幅に「高額化」しています。

 振り込め詐欺は、社会的にも"知れ渡った手法"です。それでもなお、これだけの人が騙されてしまうのです。

 この連載の読者の多くはまだ"オレオレ詐欺"のターゲットにはされない年代だと思いますが、儲け話を装った投資詐欺などには狙われるかもしれません。

 「この投資は絶対損をしないんです」
 「500万円を預けていただければ、3年後に1,000万円になります!」
 「絶対儲かる未公開株のご紹介です」

 このような誘い文句で、あなたのお金を奪おうとする人がいます。最近の"流行り"は、未公開株をネタにした投資や、世間で話題になっているキーワードにかこつけた投資の勧誘のようです。

 未公開株とは、まだ上場していない企業の株式のことです。上場したときに、株価が大幅に上がる可能性があり、未公開株を持っていると儲かることがあります。

 かつて日本中を騒がせたリクルート事件も未公開株に関する事件でした。これから上場するリクルートの関連会社(リクルートコスモス)の株を不正に取引したのが、リクルート事件です。上場すれば値上がり間違いなしだった株を、賄賂として政治家に渡した、とされています。

 この事件は贈収賄として、一大スキャンダルになりましたが、やはり未公開株は儲かる(可能性が比較的高い)のです。そこを突いての詐欺が後を絶ちません。

 また、震災後は「グリーンエネルギー関連事業に投資しませんか?」、京都大学の山中教授がiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した後は、「今話題のiPS細胞を扱っている会社のご紹介です」などと言って、あなたのお金を引き出そうとするのです。

 「絶対儲かる」
 「今が旬だから、これを逃したらチャンスはない」
 「あなただけにお伝えする情報です!」

 といいますが、普通に考えて、そんなうまい話はあるはずがありません。冷静に考えれば、誰でも「なんか怪しい」と感じるでしょう。しかし、結果的に騙される人が跡を絶たないのです。

なぜ詐欺に騙されてしまうのか?

 もちろん、最初は多くの人が疑ってかかります。しかし、だからこそ、悪徳業者は"トーク"を磨いてきます。疑っている人をトークで信じさせるだけの話術をもって、あなたに近寄ってくるのです。そのトークを聞くと、「最初は怪しいと思っていたけど、いい話に思えてきた」と感じてしまうのです。

 この手の儲け話は、「お金が欲しい」という人間の欲求をついてきます。

 もともと人間には"おいしい話"を好み、そんな話があれば飛びつきたいという願望があります。しかし、知性と疑いでそれを抑えているのです。

 そして、営業マンのトークで、自分が抱えていた"疑惑"が消えると、「もはや疑うところはない」「ついに自分もおいしい話にありつけるようになった!」と感じてしまうのです。

 疑いは、一旦晴れると、今度は逆に"強力な接着剤"として機能し、周りの人がなんと言おうと、どんな警告が発せられようと、なかなか考えを変えることができなくなります。だから、詐欺被害はなくならないのです。

リスクとリターンは必ずつり合う

『カイジ』の世界をよく知っているみなさんが、仮にこのような場面に遭遇した場合、「そんなにうまい話などない」と冷静な判断ができることでしょう。けれど、「なぜ、そう言えるのですか?」と返されたとき、あなただったらうまく答えられるでしょうか。

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木暮太一の「経済の仕組み」

木暮太一

10万部超のベストセラー『今まで一番やさしい経済の教科書』などのビジネス書で知られる著者が、なんとなく分かったつもりになっていた「経済の仕組み」を懇切丁寧に解説します。ビジネスパーソンの基礎力を高めたいなら必読です。

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