こだわりのない(ようにみえる)文章を使う凄み
角田光代版源氏物語の出版にあたり、角田さんにインタビューさせていただくという機会を頂いた、毎日放送アナウンサーの西靖と申します。それはそれはたいへん光栄で楽しいお仕事だったのですが、そのご縁で、角田さんについて、源氏物語について書く場までいただくことになりました。
それなのにのっけから読む気を削ぐようで恐縮なのですが、こういったコラムのご依頼を頂くと、どうしても少し気負ってしまいます。早い話が、せっかくだからいい文章を書きたいという気持ちがにじみ出て、どうしても筆圧が上がり気味になってしまいがちなのです。心に残るフレーズを使いたい。他の人とは違う文章にしたい。ひょっとしたら角田さんご本人も目にとめるかもしれないので、機嫌を損ないたくない、いや、できれば気に入っていただきたい。そんなみっともない欲が下敷きになるので、使い慣れない難しい言葉を使ったり、どこかで見た洒落た言い回しを無理やりはめ込んでみたりするのです。ご担当者が「あまり硬くならずに気楽に」と仰ってくださいましたが、依頼メールにわざわざそうお書きになるということは、私以外にも、そういう背伸びをしてしまう人はいるということかもしれません。
と、実にうっとおしい書き始めだと思うのですが、なぜこんなつまらない前置きをするかというと、角田さんにお話を伺ったときの、ある言葉が頭から離れないからです。それは、
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