村上佳菜子は八木沼と松木を使い分ける

これまでに、八木沼純子、織田信成、浅田舞、安藤美姫、そして町田樹と、なにかとフィギュアスケート関連の人物を取り上げてきた本連載。毎回大きな反響を呼んできました。今回はついに、平昌五輪フィギュアスケートで二連覇した羽生結弦、ではなく、先ごろタレントに転身した村上佳菜子を取り上げ、スポーツ解説を考えます。

八木沼純子と松木安太郎のあいだ

他にどういう派閥があるのかはさておき、こちとら八木沼純子派なので、今回の平昌五輪も八木沼の淡々とした解説を堪能した。情感をたっぷり盛り込んだ解説ではなく、美術館で数百円払うと借りられる音声ガイドのような、プレイヤーの演技を殺さない解説。スポーツ解説者について、左端に八木沼純子、右端に松木安太郎を置いて、どこに位置づけられるかを考えてみる。日本代表のシュートがゴールポストに当たった時に「ゴールをちょっとずらしたいよね」との名言を吐く松木がフィギュアスケートの解説に臨めば、ジャンプを失敗した選手を責めずに、ひとまず氷のせいにしてみるはずである。逆に八木沼純子がサッカー解説をしたら、シュートがバーにあたっても「シュート」「バー」としか言わないはずである。解説者の「冷静と情熱のあいだ」とはつまり、「八木沼と松木のあいだ」のことである。

「じゃあアナタが現役の頃はどうだったんだ」

西武球場の近くで育ったので子どもの頃は西武ライオンズファンで、それは必然的にアンチ巨人の姿勢にも繋がったわけだが、その名残もあり、巨人軍OBが現役巨人軍選手と戯れる光景が未だに苦手だ。具体的には『ズームイン!!サタデー』での宮本和知を指すわけだが、オフシーズンになると、キャンプ地を訪れ、選手を捕まえて、「最近のマイブームは?」などと聞くヌルいやり取りが繰り返される。選手は、宮本さんがわざわざいらしてくれた、という状況において、最大限ベストな返しをしようと試みる。技術面よりプライベート情報を引き出すことが多いので、宮本先輩に面白いことを言わなければと力む。そもそも宮本先輩が面白いわけではないので、結果的に、部活内の先輩後輩の関係だから笑う、というような純然な笑いと最も遠いところにある笑いが続く。

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ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜

武田砂鉄

365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む

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コメント

Liddell_0124 うーんSPURの対談からじゅんじゅんを買ってる時点でどーかと思ってるのよね。 https://t.co/8XTIhlMoPK 10ヶ月前 replyretweetfavorite

die_kuma 武田砂鉄さんの原稿を読んでから八木沼純子の解説聞くと最高に面白いです。 10ヶ月前 replyretweetfavorite

kareigohan42 ラストに安定の町田樹への愛。ぐっとくる 10ヶ月前 replyretweetfavorite

Neishan48 町田評が、やはり。  10ヶ月前 replyretweetfavorite