八木沼純子と松木安太郎のあいだ
他にどういう派閥があるのかはさておき、こちとら八木沼純子派なので、今回の平昌五輪も八木沼の淡々とした解説を堪能した。情感をたっぷり盛り込んだ解説ではなく、美術館で数百円払うと借りられる音声ガイドのような、プレイヤーの演技を殺さない解説。スポーツ解説者について、左端に八木沼純子、右端に松木安太郎を置いて、どこに位置づけられるかを考えてみる。日本代表のシュートがゴールポストに当たった時に「ゴールをちょっとずらしたいよね」との名言を吐く松木がフィギュアスケートの解説に臨めば、ジャンプを失敗した選手を責めずに、ひとまず氷のせいにしてみるはずである。逆に八木沼純子がサッカー解説をしたら、シュートがバーにあたっても「シュート」「バー」としか言わないはずである。解説者の「冷静と情熱のあいだ」とはつまり、「八木沼と松木のあいだ」のことである。
「じゃあアナタが現役の頃はどうだったんだ」
西武球場の近くで育ったので子どもの頃は西武ライオンズファンで、それは必然的にアンチ巨人の姿勢にも繋がったわけだが、その名残もあり、巨人軍OBが現役巨人軍選手と戯れる光景が未だに苦手だ。具体的には『ズームイン!!サタデー』での宮本和知を指すわけだが、オフシーズンになると、キャンプ地を訪れ、選手を捕まえて、「最近のマイブームは?」などと聞くヌルいやり取りが繰り返される。選手は、宮本さんがわざわざいらしてくれた、という状況において、最大限ベストな返しをしようと試みる。技術面よりプライベート情報を引き出すことが多いので、宮本先輩に面白いことを言わなければと力む。そもそも宮本先輩が面白いわけではないので、結果的に、部活内の先輩後輩の関係だから笑う、というような純然な笑いと最も遠いところにある笑いが続く。