片桐仁×高橋晋平 アイデアは締め切り直前に!「笹かま、笹かま、ササカマキリっ!」

みなさんはアイデアをどのように生み出していますか。ひとり机に向かい「うんうん」とうなりながら考えていますか? それともパソコンでネットサーフィンなんかしながら考えていますか? 『一生仕事で困らない 企画のメモ技(テク)』連載第8回は、片桐仁さんをお迎えしての特別対談後編。粘土とアイデア発想法の共通点、それは「とにかくやってみる」、そして「こねまわす」ことでした!

締め切り一時間前に期待?

高橋晋平(以下、高橋) 片桐さんは芸歴が22年で、粘土を使ったアートも18年続けているわけですよね。僕は玩具を作って13、4年ぐらいですけど、他に10年以上続けたものってあんまりないんです。やっぱり長い年月続けるのは、とんでもないなと思います。

片桐仁(以下、片桐) これだけ続いているのは、ありがたいことにたまたま連載が終わらなかったからですよ。もし締め切りがなかったら、一切作らないですから。
一度、連載の雑誌が変わるときに8ヶ月ぐらい空いたことがあって「これは大作を作るチャンスだな」と思ったけど、結局いつもの状態に戻ってました。めちゃくちゃ怠けものですよ。

高橋 それは僕も一緒で、今、十億円が手に入ったら本当にダメな人間になると思ってます。何も生産できない。ハングリーさというか、ご飯代を稼ぎ出してるんだという気持ちがどこかにあります。

片桐 僕はそこまで切羽詰ってないから、粘土に関しては趣味です。家族を育てているとかいろいろ考えることもあるけど、「知らねえ」と思ってます。

高橋 それはたしかに、僕も会社から独立した頃、金銭面での不安が大きすぎると、発想が何も出てこないということもすごく感じました。「何かを考えてもいい」っていう余裕もすごく大事だなと。一方で、仕事が流れに乗っていて、企画を考えて提出するというときに、結局いい案が出るのは締め切りの1時間前ということがやっぱりあるんです。

片桐 ずっとアイデアを考えてるんですもんね。1時間前に起こるのは、アイデアが降ってくるみたいなこともあるだろうし、今までのストックが結びつくみたいなことなのかな?

高橋 「終わった」みたいにフッと考えるのをやめるというか、「まあこれで大丈夫だな」という状態になったあとに「あ、あっちのほうがよかった」って思いつくことがあるんです。
ただ、それが締め切り後だといけない。だから、僕は「最悪でもこれで出せばOK」という企画を前日のうちに用意しておくことで、「1時間前」に期待しています。片桐さんもアイデアが出るのは締め切り直前なんですか?

片桐 僕は全部ギリギリ。締め切りが近づくと、たとえいいアイデアを思いついてなくても、とにかく作り始めることもある。何かあるんじゃないかって(笑)。

たとえば、去年の夏に仙台であった個展用のご当地作品も、まあアイデアが出なくって。個展は地方だと僕が行く日が限られるので、ご当地作品は僕が行ける日に合わせて作る必要があるんです。
仙台はご当地作品に使えそうな名物がいっぱいあるけど、なかなかいいアイデアが出ない。結局、笹かまぼこのカマキリで「ササカマキリ」にしたんだけど、それを思いついたのは僕じゃなくマネージャーで、しかも前々日の夕方でした。
「なんかないか? 笹かまか、ずんだか、牛タンか、あるだろ、なんかほら。ん~、仙台の伊達政宗とかあるだろ」「笹かま、笹かま、笹かま、ササカマキリ……?」「それだーッ!」って。

高橋 そこでカマキリが出てきたわけですね。

片桐 そう。それから笹かまを買ってきてもらって、作品用に複製を作ってくれる友人が「そんな濡れたものは複製できない」と言うところをなんとかお願いして、笹かまの複製が届いたのが仙台へ行く前日の夕方。そこから用意スタートでした。
ササカマキリのもとはハナカマキリで、僕が前から粘土で作りたかった題材なんです。蘭の花に擬態して、体の一部が笹かまぼこにそっくりなので「ササカマキリ」とガチッとあったんですよ


片桐氏制作の「ササカマキリ」

粘土もアイデアも「こねまわして」できる

高橋 さっきのマネージャーさんの話しかり、なんでもいいんですよね、ネタ元って。

片桐 なんでもいいんです。ところで、晋平さんが乙幡啓子さんと作った「民芸スタジアム」はどういう経緯で?

高橋 民芸はもともと乙幡さんがやってたネタだったんです。乙幡さんと「一緒になにか作りましょう」と言ってたんですけど、どっちもシュール作家だから、一緒にやっても何も起きない(笑)。唯一乙幡さんができなくて僕ができるのがゲームを作ることだったので、僕がゲームルールを作って乙幡さんがネタを決めてゲームをやろうと。最初は新宿駅の地下道が絶対に覚えられないぐらい複雑でアツいから、それをネタにという案もあったんですけど、ちょっとできなくて、他にいくつか出したなかに民芸があったんです。

民芸品はこけしや赤べこしか知らなかったので調べてみたら、200年とか300年前の話だけど、信じられないんですよ、なんでこんなのが生まれたかって。デザインもすごくいいから、これをクリーチャーにして遊戯王みたいなことをやろうと。


「民芸スタジアム」

片桐 あ〜、なるほど。で、カードゲームに。

高橋 というのが、民芸スタジアムの成り立ちなんです。ドラゴンとかだと描いたら難しいし、出尽くしてるじゃないですか。でも民芸っていうすごいのが手に入っちゃったと。しかも日本中にすでにあるって。オリジナルと呼んでいいかわからないですけど、誰かの想像から生まれているわけですよね。たとえば「猫に蛸」っていう山形の相良人形があるんです。
招き猫に蛸がしがみついて、蛸は「多い幸」の多幸のダジャレで、倍の福を招くみたいなやつなんですよ。どこから思いついたかはもう知るすべはないですが。

片桐 シュールすぎるなあ。

高橋 やっぱり、土をこねているうちにできた気もするんですよね。こねまわしていたらできたっていうのは、発想法も同じことで、だから、没ネタから考えるっていうのは理にかなってるんです。ただ、今の子どもや学生は優秀で、間違いたくないみたいで。
実は自分も、最近、ミニスーファミ(ニンテンドークラッシックミニスーパーファミコン)で「ファイナルファンタジー6」をやっていて「すげー、今やっても面白いな」と思ってたんですけど、愕然としたことがあったんです。

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高橋晋平

ヒット企画を生み出すのに特別な才能なんていりません。必要なのはメモの技術です。本連載は、∞プチプチなど大ヒット商品を数々生み出してきた高橋晋平氏の最新刊『一生仕事で困らない 企画のメモ技(テク)』から、クリエーターでも何でもないごくご...もっと読む

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コメント

bear_yoshi 「金銭面での不安が大きすぎると、発想が何も出てこないということもすごく感じました。「何かを考えてもいい」っていう余裕もすごく大事だなと」 /  1年以上前 replyretweetfavorite

RAHMENS_KK98 https://t.co/SeOtenlcC9 1年以上前 replyretweetfavorite

ALF_in_the_sky 【片桐仁さん対談】※後編 1年以上前 replyretweetfavorite