「Arrrgh......バ、バカな……何故ただの銃弾で、この私が……!」
ブギーマンは必死に呻いた。
「ただの銃弾じゃないからさ。ヤドリギの精油による二重のコーティングを施してある。もう助からんぞ」
コートの若者が銃口を突きつけながら告げた。
「きッ、貴様……ブラム・ストーカーだな……! レ・ファニュの門弟! 呪われろ! 永遠に呪われろ!」
「静粛に! 静粛になさいーッ!」
遠い場所から修道女の怒鳴り声が聞こえた。別の病室で、無関係の発作が起こり始めた。誰もトーマスのところに来る気配は無かった。
ハーンはブラムのほうを一瞥して肩をすくめた。
「お前がやれよ。お前の獲物だ」
ブラムはそう言うと銃をブギーマンに突きつけ、うつ伏せに倒れたその背をブーツで踏みつけた。
「……」
ハーンは無言で頷き、ブギーマンの横に立った。そして語りかけた。
「僕のことを覚えているか……? ハーンだ。ラフカディオ・ハーン。お前らに大切な友達と、この左目を奪われた」
ハーン少年は防火斧の鈍い刃をブギーマンの首に押し当てた。腹の底から煮えたぎるような憎悪がせり上がってきた。
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