片桐仁×高橋晋平 アイデアは「お題」という縛りで面白くなる

みなさんはアイデアをどのように生み出していますか。ひとり机に向かい「うんうん」とうなりながら考えていますか? それともパソコンでネットサーフィンなんかしながら考えていますか? 『一生仕事で困らない 企画のメモ技(テク)』連載第7回は、片桐仁さんをお迎えしての特別対談前編。アイデアをいかにして生み出していくか、そこにはお題が与える枠や縛りのようなものが大きく関係していたのでした。



ダジャレの力は半端ない?

片桐仁(以下、片桐) 本読みましたよ〜。
高橋さんのアイデア発想法、面白いですね。なんか、鴻上尚史さんの『発声と身体のレッスン』とか『演技と演出のレッスン』とかのレッスンシリーズという本があって。僕は鴻上さんの舞台に何度も出してもらっているのもあって、その本をけっこう読んでるんです。その本はワークショップ形式になっていて、読んでて楽しい気持ちになる。この本も似てます。面白いです。

高橋晋平(以下、高橋) 光栄です。

片桐 アイデアの出し方をメモと結びつけるとか、それを文字にしてくれたのは大きい。漠然と思ってたことが、「ああ、なるほど」ってつながりました。「アイデアしりとり」で自分の得意なほうばっかりにアイデアが偏らないようにするとかもすごいですね~。

高橋 人間やっぱり同じことしか考えられないので……。

片桐 いや本当そうですよ。「また同じパターンに陥ってる」って思いますよ。

高橋 そこで今日は、アイデアの発想法というか、片桐さんがどんな思考回路で数々の作品を生み出しているのか、お話を伺いたいなと思っています。このスマホケースはカメムシですか? 前回お会いしたときはカレイPhoneをお持ちでしたが、すごいなあ。

片桐 そう。もともとは、『99.9-刑事専門弁護士- SEASONⅡ』(TBS)用と、沖縄の個展用にカメムシのスマホケースを作ったんです。

香川照之さんからは「次は虫だよな。カマキリがいい」と言われてたけど、カマキリはiPhoneに合わないし、沖縄のご当地作品を作るタイミングと重なっていたので、沖縄にいるナナホシキンカメムシにして。

ナナホシとiPhone7もかけてます。それで香川さんに見せたら「うん、カマキリがよかった」ってよくわからないことを言われて……。

ただ、個展用とテレビ用に2個作ってナナホシには飽きたので、この僕の持ち歩く用のは、いちばん好きなニシキキンカメムシの模様なんです。もう何にもかかってないという。

高橋 ああ、なるほど、なるほど(笑)。ダジャレの力って半端ないですよね。このシリーズは最初が「鯛Phone」ですか?

片桐 最初はサイなんです。「サイフォン」があって、全然関係ない「カエルちゃん」ってのがあって、顔の「顔フォン」があって。それで「鯛Phone」、「鬼Phone」、「カレイPhone」、「ナナホシキンカメムシ」っていうね。

高橋 ダジャレだか何だかわからなくなってきてますが(笑)。

片桐 そうそう。鬼はね、映画用なんです。『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』っていう宮藤官九郎さんの映画で鬼Phoneを作ってくれって依頼が来て、「作るから出してくれ」って出してもらったんです。ああいう企画でオーダーが来ると助かりますね。アイデアを考えなくていい。

形に制限があるからオリジナルになる

高橋 粘土作品のスタートはいつ頃からなんですか。

片桐 芸歴が22年で、粘土は18年目ですね。1999年の11月頃からだから。最初は文具を俺色に染めていく「俺の文具道」っていう連載だったんです。『ヤングマガジンアッパーズ』でラーメンズを取材してもらって、「何かやらせてくれませんか?」って言ったら「本当にやります?」と。いい時代ですよね。

ただ、白黒の活版で刷りが悪すぎて、黒いのを作ったら全部見えない(笑)。黒とか赤、青はやめましょうって、色の制限みたいなのもあった。そこで「俺セロハンテープ台」とか、「俺筆」、「俺硯」みたいなのをやって、そのうち文房具の種類がなくなっていったんで、対象を広げて。それこそ携帯ケースは、最初に携帯電話を持ったときに「これだ!」と思って「俺虫」っていうのを作ってから、自分の携帯電話を買い換えるごとにやってたんですよね。

高橋 粘土を盛る土台はどうやって考えていたんですか。

片桐 最初は粘土を盛りたいものと、領収証が切れるので欲しいものを土台にするっていうヨコシマなのもあったし、ボケとして、これに粘土盛るのかというものに盛ったりとかもして。
要は、ゼロからの彫刻だとバリバリのアートになってしまうし、フィギュア的にいったら技術的なものも見られちゃう。
だけど、アートとして広辞苑に粘土を盛る人はいないじゃないですか。だから、隙間産業じゃないけど、とにかく比べられないようにというか、同じラインに立たないようにしようと思ってたし、お笑い芸人でここまでやる人はいないからとか、逃げ道を考えてましたね。

高橋 お話を聞いていて思ったんですが、さっきの「俺○○」っていうのは、内から湧き出てくる「俺」がやりたいっていうことですか?

片桐 「俺虫」とか始めたときは20代で、美大を出てまだ時間が経ってない頃なので、とにかくアーティスト片桐仁を売りたくてしょうがないんですよね。だから自分の顔ばっかり作ってたし。ただ「俺」ばかりやると飽きてきましてね。

高橋 なるほど。ただ、「俺」というか、好きなことからやっていくわけじゃないですか。それって大事だなあと思ってまして。
僕は片桐さんと違って自分に才能なんてものが何一つないのに、「俺から生み出したい」みたいなことばかり思っていて、それで何も生まれないという時代があったわけですよ。
つまり、そういう内なる俺みたいなことだけだと、(考えることは)同じことばっかりだから、今では変化を外に求めているという感じですね。

片桐 なるほど。僕の粘土作品のいいところは、ゼロから作ってないので、土台に左右されるっていうのが今思えば面白いかなと思うんですよね。オリジナルになるんですよね。形に制限があるから。

高橋 それわかります。工作のワークショップみたいなのをお子さんや高齢者のかたとやるときに、百均で揃えたものとかいろいろな材料を持っていくんです。そのいいところは何かしらできちゃうことなんですよね。くっつけるものとものがあれば、ロボットができちゃうみたいな。

片桐 ゼロから粘土を渡して「はい、これで」って相当難しいですからね。

高橋 そう、それで「はい、できましたよね」みたいにいうと「あ、できた」っていう満足感がある。手を動かしてるとできるってのはありますよね。

片桐 僕も子どもの小学校でワークショップをやる機会があって、スカルピーっていうオーブンで焼く粘土でやらせてみたら、30人ぐらいのクラスでちゃんとやった子は2人ぐらい。もうちょっと「できた!」っていうのがないかなと思って。それで、別の依頼があったとき、もっと完成が早くなるように、子ども向けのカラー粘土を使ったんですよ。
まず土台となるものを覆うように両面テープを貼らせて「両面テープが見えなくならないと完成じゃないですよ」って。
そうすると完成しますよね、絶対に。今はそのワークショップを各地でやってるけど、まあ完成します。

高橋 お題の設定がいいと完成できる人が多いんですよね。片桐さんの作品も、土台を見つけてこれに粘土を盛ったらどうなるかから始まってる。まさにお題を粘土にした「かけ合わせ」だと思うんです。

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高橋晋平

ヒット企画を生み出すのに特別な才能なんていりません。必要なのはメモの技術です。本連載は、∞プチプチなど大ヒット商品を数々生み出してきた高橋晋平氏の最新刊『一生仕事で困らない 企画のメモ技(テク)』から、クリエーターでも何でもないごくご...もっと読む

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4452kao 好きだなぁ仁さんの考え方! 1年以上前 replyretweetfavorite

RAHMENS_KK98 https://t.co/vBvnw0v8Lb 1年以上前 replyretweetfavorite

asapublishing 【パブ情報】cakes連載! 1年以上前 replyretweetfavorite

ALF_in_the_sky 【片桐仁さん対談記事】 1年以上前 replyretweetfavorite