復讐手帖

君には愛情しかない!と口説かれ「コスパが悪い」不倫にはまる独身女

浮気症だった実の父に対するトラウマが引き寄せるのか、20歳の頃、30歳年上の「先生」を好きになってしまったナツコさん(46歳)。「俺の全身全霊をかけて愛する」と言ってくれたものの、妻が部屋に怒鳴り込んできた日をきっかけに、つらい恋はさらに泥沼化していった……。行き場を失った女の想いが向かう果てを描いた『復讐手帖』をcakesで特別連載!

独身女性の復讐の矛先が妻へ向かうのはレアケース

今の時代、独身女性が既婚男性とつきあったとしても、どうしても奪いとりたいがゆえに妻に攻撃を加えることはめったにない。そもそも「不倫はコスパが悪い」と独身女性たちは冷静に判断しているからだ。離婚すると言いながらなかなかしない彼を責めることはあるだろうが、一気に妻に向かうケースはそう多くはないのだ。
だが、中には全身全霊をかけて恋をする女性ももちろんいる。そういう女性が限界を越えると妻に直接攻撃することになる。

【浮気症の父に対するトラウマが引き寄せる、父親のような年上の男】
「今になると、悪いことをしたなと思うけど、あのときは我慢できなかったんですよね」
ナツコさん(46歳)は過去を振り返ってそう言う。学生時代、彼女は30歳年上の人と恋に落ちた。
「大学の先生ではありませんが、ある研究機関の“先生”と呼ばれる人でした。私が学んでいた専門分野の先生だったんです。彼がいる研究機関にときどきお邪魔して教えを請うているうちに恋に落ちました。私にとっては初めての大人の恋だったんです」
当時、ナツコさんは20歳になったばかり。相手は父親とひとつしか違わなかった。彼女の父親は浮気者で、小さい頃、父に手を引かれて愛人の家に行ったこともあるという。ナツコさんは父の浮気を隠すためのカモフラージュとして使われていたのだ。
「いろいろな女の人のところへ連れていかれました。そのときどきで父がつきあっていた女なんでしょう。お昼頃行くと、家ではあまり見たことのないようなおいしいものがあって、お腹いっぱい食べていいと言われる。食べると眠くなる。起きると、父と女の人がニコニコしていて、お小遣いもらったりおもちゃをもらったりして、また父と一緒に帰ってくるんです。『さっきの女の人のことはお母さんには内緒だよ』っていつも言われました。まだ小学校にも行っていない頃だから、当時はわからなかったけど、あとから考えると、父の浮気に巻き込まれていたんだと合点がいきました。母はよく泣いてましたね」
 親子関係だけが人を作るわけではない。親子の関係性が機能不全だったからといって、必ずしも恋愛に悪影響を及ぼすとは言い切れないだろう。だが、ナツコさんの場合は、子どもの頃の経験が少なからず影響していると本人が考えている。
「泣いている母、何もわからなかったけど父の浮気に加担させられていた幼い娘の私。いつも忸怩たるものを抱えながら大きくなっていったような気がするんです。私にとって、父は世間一般の“お父さん”ではなく、あくまで“男”だったんですよね。もう亡くなって20年以上たちますが、思い起こすのは“男である父”です」
そんな家庭がイヤで、東京の大学を選び、上京してひとり暮らしを始めた。20歳の頃、30歳年上の男性に恋をしたのは、何か父親とのことが関係しているはずだと彼女は言う。
「なぜかわからないけど、30歳年上の彼に夢中になりました。知的で大人で、私のすべてを受け入れてくれる。それは私が求めていた父親像に近かったのかもしれないけど、実際には彼は本物の男。最初に体を貫かれたときはショックと痛みで泣いてしまいました。いつも優しい彼が、生身の男の素顔を見せたから。でも、時間がたつにつれて、その生身の男に惹かれていったんです」

きみには愛情しかない、という言葉の意味

彼には10代の子どもたちがふたりいた。周りからは「子煩悩で愛妻家」とも見られていた。ふっと自分が子どもの頃のことを思い出したという。

「彼のことが好きでたまらない。だけど彼の家庭を思うと苦しかった。彼は『家庭には責任があるけど、きみには愛情しかない。俺の全身全霊をかけて愛する』と言ってくれて、その瞬間はうれしかったけど、よく考えると『ずっと愛し続ける』という意味ではないんだなと悲しくなったり……。常に不安で後ろめたくて、でも大好きで。つらい恋でした」

3年間、濃密な時間を過ごした。たびたび旅行もしたし、彼がナツコさんの部屋に泊まっていくことも少なくなかった。
その間、彼女の就職についても彼は親身になって相談に乗ってくれた。彼女が勤め始めたのは、彼の勤務先からほど近いところ。ふたりの距離はさらに縮まった。
「彼、自宅が勤務先から遠かったので、仕事が遅くなるとカプセルホテルなどに泊まることがあったみたい。だから私のところに泊まって帰らなくても不審がられることもなかったんでしょう。まだ携帯電話もなかったし」

携帯電話があるからこそ、不倫の恋がしやすくなったり長続きしたりすることになったのだが、一方でバレやすくもなっている。携帯がない時代は、言い訳が通用した時代でもある。

「でもある日、私の部屋に奥さんが怒鳴り込んできたんです。彼と一緒にいるときでした。チャイムが鳴ったので覗き穴から見ると女性が立っている。奥さんだとピンときました。もちろん出るつもりはありませんでしたが、玄関の外で『〇〇、出てこい』って彼の名前を叫んでいる声がして。それからドアを叩き続けるんです。さすがに彼が『近所迷惑だから出るよ』と。彼が玄関を開けるなり、彼女が飛び込んできました。そしていきなり私に殴りかかってきたんです」

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復讐手帖

亀山早苗

別れた男、不倫相手、夫……。男の裏切り、心変わり、嘘の塗り重ねに、行き場を失った女性たちの想いが”復讐”という形で狂気に変わっていく。独身男女の愛がこじれたとき、夫の不倫を知ってしまったとき、自分自身の不倫の末……など、実際にあった復...もっと読む

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