鉄鋼業界の威信が今も輝く「鉄の城」【茅場町・鉄鋼会館】

数々の街歩き取材を重ねてきた、文筆家・路地徘徊家のフリート横田氏。2020年 の大イベントを前に、東京の街が大きな変貌を遂げつつあることを肌で感じているといいます。その危機感から始まった本連載。
第十四回は、高度成長期に鉄鋼業界の持てる技術をつくして作られたという鉄鋼会館。静かに、でもしっかりとたたずむ、風格ある躯体を仰ぎ見に。



昭和41年、竣工時の鉄鋼会館(提供:鉄鋼会館)


終戦時、日本は国土だけでなく工業生産力も荒廃していた。鉄鋼業もまたしかり。その時期稼働していた高炉は全国でたった数基という壊滅的状況であった。ただ「鉄は国家なり」という言葉もあるくらい鉄の生産は国力を支える重要産業。その復興に向け、国も資源や資金を重点的に鉄鋼業界に投入した。そして昭和25年の朝鮮戦争勃発による特需がやってくると、日本経済も鉄鋼業もようやく息を吹き返したのだった。

ところが昭和28年の休戦後は、ふたたび不況に。鉄鋼も輸出が大幅に減ってしまう。一方、国内の需要はぐんぐん伸びはじめた。造船や機械などの重工業の需要が増えたのはもちろん、戦後の人々の暮らしぶりもかわってきたのだ。

まず戦災で焦土となった都市部では、木造住宅から鉄骨や鉄筋を使った不燃住宅への転換も進められた。また戦前は木製が多かった学校や会社のロッカーや机、椅子なども、戦中・終戦直後の大量使用による木材枯渇もあって、金属製に置きかわってきたこともある。こうして昭和30年代に入ると、鉄鋼メーカーはフル操業の状態にまでなった。日々、灼熱の溶けた鉄が炉から大量に吐き出され続ける時代が到来したのだった。


伸びゆく鉄鋼業界。
そのシンボルが立ちあがる。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

2020年五輪の話題が「光」なら、消えゆく昭和の風景は「翳」。まぶしい光でなく翳にこそ惹かれる、そんな人々に向けた渾身の一書!

この連載について

初回を読む
東京ノスタルジック百景 シーズン2 ~今見ておきたい昭和の風景

フリート横田

ライター兼編集者として、数々の街歩き取材を重ねてきたフリート横田氏。著書『東京ノスタルジック百景』からのcakes連載が好評を博し、満を持して書き下ろしの連載がスタート。2020年の大イベントを控え、急激に変化しつつある東京。まだわず...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

mnmosw こんないかした建物あったんだ 9ヶ月前 replyretweetfavorite