早く家に帰ろう

今回の「ワイングラスのむこう側」は、林伸次さんが担当編集者に書いた私信です。一編集者の個人的な話にページを割いてしまい、誠に申し訳ありません。ただ、これから家庭を持とうと思っている方、そして新婚当時の気持ちを忘れかけている方、たくさんの人たちに当てはまる話だと思います。ぜひお読みいただければ幸いです。

お店を閉めて家に帰ろうかなと思う時

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

高校生の時、バンドをやっていたのですが、他校のちょっと暴力的な人たちに「あの林ってやつ、調子にのってて生意気だ」と目を付けられたことがあったんですね。それで、ちょっと裏の方に連れて行かれたり、胸ぐらつかまれたりとしばらくの間、ずっと怖い目にあっていたのですが、その2、3週間の間、僕が心の中で思っていたのは「早く、家に帰りたい」ばかりだったんです。

一応、思春期ならではの反抗期でもあったので、特に母に対しては生意気な態度や言葉で接していた頃でした。でも、その暴力的な人たちに「おい、おまえちょっと来い」と言われたり、囲まれたりしたとき、心の中で一番最初に浮かぶのは母や父の顔で、「ああ、早く家に帰りたい。あのコタツの中にもぐり込みたい」ってことばかりがぐるぐるしたんです。

お店をやっていてもたまに嫌なことってあるんですね。まあ、お酒をすごく飲んでいる人たちがお客様なので、いろんなことがあるわけです。そんなときも、いつも思うのが、「ああ、今、突然、お店閉めて、家に帰っちゃおうかなあ」ってことなんです。「お店閉めて、どこか飲みに行こうかなあ」ではないんです。「お店閉めて、家に帰ろうかなあ」なんです。

先日、この連載の担当編集者の大熊さんが結婚したんですね。お相手は年上の美人で、さらに再婚で息子さんもいるそうなんですが、これ、僕も同じ状況で結婚したんです。僕の妻も年上で美人で、再婚で娘もいました。そんな時、cakes編集部から「大熊さんを囲んだパーティをするから、林さん、1分くらい何かメッセージ動画をください」って依頼があったんです。

連載が始まってから5年間、毎週一緒に記事を作ってきたという戦友の気持ちもあるし、同じ状況という同士の意識もあるし、「何か先輩としていい話しなきゃな」と思って、冒頭の話をしようとしたのですが、全然1分でまとめられなかったので、ここで改めて文章にして、大熊さんに送ります。

いい家族って何なんだろう、ってよく考えます。みんなが友達のように仲良く明るくわいわいやっている家族でしょうか。

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ワイングラスのむこう側

林伸次

東京・渋谷で16年、カウンターの向こうからバーに集う人たちの姿を見つめてきた、ワインバー「bar bossa(バールボッサ)」の店主・林伸次さん。バーを舞台に交差する人間模様。バーだから漏らしてしまう本音。ずっとカウンターに立ち続けて...もっと読む

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コメント

Matsuhiro ああ、あったかくていい文章だな。 約1年前 replyretweetfavorite

hakusant 「外ですごく嫌なことがあったり、上司にひどいことを言われたり、取引先にひどい対応をされたり(省略)、とにかくいろんな嫌なことがあったとき、「ああ、 約1年前 replyretweetfavorite

Kumakuring さすがいい記事だなぁ…! 約1年前 replyretweetfavorite

yuriyoshihara とてもいい。私も外から見て幸せ感があるかどうかより、家族みんながほっと出来て帰りたくなる家庭を 約1年前 replyretweetfavorite