負の気持ちでしかつながれない日本はインターネットの使い方を間違えている

「ネット時代の作家」のスタイルを作り上げることをライフワークとするはあちゅうさんと、自らが代表をつとめる「PLANETS」から、雑誌、書籍、インターネット番組と積極的に発信を続ける評論家の宇野常寛さん。二人は「自分」の価値をいかに築き上げ、それをどう仕事にすべきだと考えてきたのでしょうか。はあちゅうさんの新刊『「自分」を仕事にする生き方』をもとにふたりの「仕事」観をたっぷりとぶつけ合います。

自己肯定感のベースは時間に対する主導権

はあちゅう 私、会社員の時は自己否定ばかりしてました。合わないシステムのなかに自分を合わせよう、合わせなきゃって毎日で、自分ができないことばかり目についちゃって。でもフリーランスになって「自分を仕事」にすると、できることのほうにフォーカスがいく。だから自信がつくんですよね。

宇野常寛(以下、宇野) 時間に対して自分が主導権を持ってるって感覚、これが自己肯定感のベースだと思うんですよ。日中の活動的な時間を他人に決定されてることの絶望みたいなものって、圧倒的に大きい。

はあちゅう ただ、会社員がダメかっていうとそうではなくて、会社員の中でも自分でイニシアチブを取って、自分の時間を生きてる人はいる。そのヒントみたいなことは、この本にいろいろ散りばめたつもりです。

宇野 ポジティブな意味での「不良会社員」みたいな人は、たしかにいます。というか、かつていました。会社で戦略的に干されるなりして、自分にしかできない仕事をやり、意外なところで成果をあげるとか。会社のシステムをうまくハックして、会社の金と予算と人員を使ってやりたいことをやる。2、30年前に日本のマスコミの景気が良かった頃の話ですけどね。でも、今の僕らにはインターネットがあって、会社に依存しない、いろんな仕組みを利用できる。会社というシステムの中の道が狭くなってるぶん、会社の外側で活動しやすくなってる世の中になってるんじゃないでしょうか。

はあちゅう 古巣の電通だと、オリンピックに関わりたいから電通に入るっていう人が多いんですよ。個人の力でオリンピックに関わろうと思ったら、業界のかなりトップに行かなきゃいけませんが、そういうのをショートカットできるからって。

宇野 でもさ、電通のオリンピックってつまらなさそうだよね。「東京2020 開会式・閉会式 4式典総合プランニングチーム」の布陣を見て、申し訳ないけど絶望したよ。はずさない、ケガしないことだけを考えたメンツなんだろうけど、残念ながら「21世紀に向けて、日本は国際社会に向けてこういうキャラで行きたい」っていう新しい物語を語るメンツではないなと。

はあちゅう そうなんですか……。誰だったら宇野さんはハッピーですか。

宇野 庵野秀明で戦後サブカルチャーの総決算をやるか、チームラボの猪子寿之あたりでまったく新しい デジタル時代のオリンピックをやって開会式もぜんぶインタラクティブな参加型にしちゃうか、どっちかだよね。

評論家の肩書きが網羅する仕事の中身

はあちゅう じゃあ話題を変えて(笑)。評論家ってどうやってなったんですか、っていう小学生みたいな質問してもいいですか。私、肩書きが評論家の方とちゃんとしゃべるの、初めてなんです。

宇野 「スーパーメディアクリエイター」みたいなもんですよ。名乗った瞬間から評論家。

はあちゅう それ、「作家」も一緒ですよ。私はブロガー・作家って名乗ってるんですが、去年「お前なんか作家じゃねえ」って言われて大炎上して……。宇野さんは「お前なんか評論家じゃねえ」って言われないんですか?

宇野 言われますけど、評論家は作家と違ってあまり良い肩書きだと思われてないですからね。評論家って、口だけ出して何もやってないやつ、みたいな負のイメージがあるから。ただ僕は肩書はどうでもいいんですよ。あまり気にしたことがない。

はあちゅう そうなんですね。実は宇野さんの評論家って肩書きを最初に見た時に、評論して一体どうやって食べていくんだろうって、不思議に思いました。

宇野 世の中で評論家を名乗って評論家っぽい仕事をしてる人のほとんどは、大学の先生なんです。僕も非常勤で教えてるけど、そうじゃなくて、ちゃんとした教授ね。彼らはたぶん年収1000万とかもらってるんだけど(笑)、そういった十分な収入のある人が、非専門家に向けて書くのが評論なんですよ。僕は評論そのもので食ってるわけですが、実は僕みたいな在野の評論家の文化って日本特有なんです。

はあちゅう 日本特有というのは?

宇野 文化について評論している在野の人間が、政治や社会問題について新聞にコラムを書いたり放送でしゃべったりする文化です。小林秀雄あたりからずっとある流れなんですが、そのはしっこに引っかかっている人間だと思うんですよ、僕は。

はあちゅう 分野が広んですね。でも宇野さんの活動を見ていると、どうやったらそんなにやりたいことや、しゃべりたいことが湧いてくるんだろうって思います。ラジオでも、あっちこっちの話題を拾ってますよね。まったく受け付けない題材はないんですか?

宇野 ネット右翼とか(笑)。

はあちゅう 私も受け付けないですけど。……あ、でも私、ネット右翼のこと、よくわかってないかも。

宇野 自分の人生がうまく行かないのを、中国や韓国や左翼のせいにしている人たちです。ネット左翼も大嫌いですけどね。

はあちゅう ネット左翼はどういう人なんですか?

宇野 自分探しのために綺麗事を言っている人たちですね。現実的でない政策をバンバン提案するんだけど、そんなロマンチストな自分かっこいい!とか思ってるパーのことです。

炎上に傷つかない強靭な宇野メンタル

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自分を仕事にする生き方」がこれからのスタンダードになる 宇野常寛×はあちゅう

宇野常寛 /はあちゅう

「ネット時代の作家」のスタイルを作り上げることをライフワークとするはあちゅうさんと、自らが代表をつとめる「PLANETS」から、雑誌、書籍、インターネット番組と積極的に発信を続ける評論家の宇野常寛さん。二人は「自分」の価値をいかに築き...もっと読む

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コメント

kiq “「ネット時代の作家」のスタイルを作り上げることをライフワーク”椎名桜子みたいですね 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

4your_company 「。」←いい事言う! https://t.co/iF0yqDMljD 7ヶ月前 replyretweetfavorite

haphopper ➤ https://t.co/H6n9UdYJQF 8ヶ月前 replyretweetfavorite

_______tomo 日中の活動的な時間を他人に決定されてることの絶望みたいなものって、圧倒的に大きい。 ただ、会社員がダメかっていうとそうではなくて、会社員の中でも自分でイニシアチブを取って、自分の時間を生きてる人はいる。 https://t.co/b3ye56m7mW 9ヶ月前 replyretweetfavorite