自分が生きてることは全部仕事になる

「ネット時代の作家」のスタイルを作り上げることをライフワークとするはあちゅうさんと、自らが代表をつとめる「PLANETS」から、雑誌、書籍、インターネット番組と積極的に発信を続ける評論家の宇野常寛さん。二人は「自分」の価値をいかに築き上げ、それをどう仕事にすべきだと考えてきたのでしょうか。はあちゅうさんの新刊『「自分」を仕事にする生き方』をもとにふたりの「仕事」観をたっぷりとぶつけ合います。

宇野常寛は「イケハヤ、はあちゅう」の仲間か?

宇野常寛(以下、宇野) ほぼ初対面ですね。前に、僕が代表をつとめるPLANETSが主催した渋谷・ヒカリエのイベントに、なぜかイケハヤさん(イケダハヤト)がはあちゅうさんを連れてきて、そこでお会いしたのが最初かな。

はあちゅう ご挨拶だけでしたね。私も「スッキリ!」に出てたんです、みたいな感じで。私が火曜日で、宇野さんが木曜日のコメンテーター。けど、お互いの曜日を観たことはなくて、他に接点がないし、フォロワーさんもかぶってないですよね。

宇野 3、4年前かな。作家の岩崎夏海さんのイベントに呼ばれて岩崎さんと対談した後、打ち上げで泥酔しきった謎の出版業界の中年男性に「お前なんて、どうせイケハヤやはあちゅうの仲間なんだろ!」って絡まれたことがあります。

はあちゅう 私、悪の権化みたい(笑)。ネットから出てきた、俺らには正体のわからないやつら、って扱いですね。

宇野 とりあえず「最近ネットで目立っているけど、いけすかないやつら」っていうフォルダなんでしょうね。それはともかく、『「自分」を仕事にする生き方』を読ませてもらったんですけど、僕の感想の前に、どんな位置づけの本かというのを、改めてはあちゅうさんから説明していただけまますか。

はあちゅう 私、会社員を6年弱やって、今フリーランス3年目なんです。以前出した『半径5メートルの野望』という本は、会社員をしながら書いた本だったんですが、今回の『「自分」を仕事にする生き方』は、フリーランスになって見えてきたものを盛り込みました。

宇野 自分をコンテンツ化する、ってことですね。

はあちゅう はい。自分が生きてることは、全部仕事になるんだと気づいたんです。会社員の時は、新しい仕事を作っていかなきゃとか、どうやって自分の好きなことを生かして仕事につなげていこうかとか、どうしたらお金になるんだろうってことを、めちゃめちゃ一生懸命考えてたんですよね。でもフリーランスになってからは、自分の生きている道が勝手にコンテンツやお金になってる。

 たとえば、いま私は、すごく結婚願望があるわけじゃないんですけど、結婚したい女の人から見れば、それってすごく不思議なこと。だから、どうして結婚願望が希薄なのかを聞きたいっていうインタビュー依頼もあるんですよ。それに答えたらお金になる。それって、別に私が「結婚したくない」願望を頑張って作り出したわけじゃない。普通に生きてたら、たまたまそういう考えを持って、その表明がたまたまお金になりましたって話で。そういう方法って、実はめちゃめちゃたくさんある。

宇野 なるほど。じゃあ、フリーランスになって何が一番変わりましたか。

はあちゅう 昔より自己肯定感が強くなりました。だからこの本でも、自分というのはそのままで価値があるし、それを人前に出していくことによって、どんどん新しい仕事につながっていくんだ、ということをメッセージとして書いたんです。

「自分」を仕事にすることは今後のスタンダードになる

宇野 僕ね、この本を読んで、違うなと思ったことがひとつもないんですよ。だから今日、あんまり議論にならない(笑)。

はあちゅう ほんとですか!

宇野 むしろ逆に、インターネットにSNSが普及して7、8年も経つこの時代に、こういうことを理解しないまま自分の名前で仕事しようなんて人がいたら、その時点でアウト。……って思うくらい、真っ当なことばかり。しかも、冒頭1ページ目に、問題の本質が全部書いてあるんですよね。今まで「自分を仕事にする」のは、ほんの一握りの人間の特別な、人生を危険にさらすギャンブラーのような生き方だと思われてたけど、この情報化社会では天下万民に当てはまることなんだと。これがすべてですよ。そのことに気づいてるか気づいてないかだけの差です。

はあちゅう ただ、「自分を仕事にする」なんて誰もができることじゃないって反対意見も、結構いただきました。

宇野 それ、きっと問題の立て方が違うと思う。はあちゅうさんは「自分を仕事にする」生き方が裏技っぽくて素敵でしょ、って言ってるんじゃない。みんな気づいてないけど、自分でも知らないうちに自分を仕事にせざるをえない世の中になってきているってことを言ってる。今の日本は戦後の古い体制が残ってるから、「自分を仕事」にしない生き方ができる人はまだたくさんいるけど、僕らが生きてる間にスタンダードはきっと変わる。

はあちゅう 絶対そうです。今は過渡期ですね。

宇野 「cakesに宇野が書いてる」じゃなくて、「宇野がcakesに書いてる」に変わってから、けっこう時間が経っているわけですよ。はあちゅうさんの主張に反論があると聞くと、そういう基本的なことがわかってない人が、まだすごく多いんだなって思います。

やりたいことは、他の人が見つけてくれる

はあちゅう 読者のなかには、やりたいことや好きなことを仕事にしたいけど、やりたいことも好きなことも見つからない、という矛盾した悩みを持つ人もいます。そういう人は、まず自分を人前にさらしたほうがいいって思うんですよね。その結果、好きなこともやりたいことも、周りの人が見つけてくれる。

 私の出自はブロガーで、大学生の時に「さきっちょ&はあちゅう 恋の悪あが記」っていう、友達とのふざけた交換日記をネットでブログとして人前にさらしたんですよ。そうしたら、読者からどういう展開にしたらおもしろくなるかという意見をたくさんもらいましたし、書籍化も決まりました。その後のお仕事にもつながっています。自分を人前にさらしたことによって、自分にコンテンツとしての価値があることに気づいたんです。むしろ他人から言われないと、自分の価値には気づけない。

宇野 たしかに、自分のやりたいことが見つからないと言ってる人って、だいたい自己分析するから失敗する。自分で自分のことがわかるなんて考え方、傲慢ですよ。

はあちゅう 自分のほうが自分のことをわかってないんですよね。意外に親とか友達のほうがよく見えてる。自分が普通にできることが、実は個性なんだよってことを、この本の中でも言ってるんですよ。たとえば、私は昔からめちゃめちゃ読書スピードが早いんですけど、自分では早いって認識がなかったんです。でも中学生のとき、夏休みの間に300冊くらい読んで教師に報告したら、絶対ウソだって言われて。その時はじめて、人よりたくさん読むんだってことに気づきました。自分の個性って、自分で探してるうちは見つからない。

宇野 就活生に自己分析しろって言うの、やめたほうがいいですよね。

はあちゅう あれやってても、自分のこと嫌いになるだけですよね。

宇野 それに、大学生ぐらいの人間が自己を客観視するなんて、生物として無理。若い人ほど他人の目を使って自分を分析すべき。

はあちゅう 私は取材されるようになったことで自己分析ができて、自分のことがよくわかるようになったんです。取材では、初めて会った知らない人から答えようもない質問を受けますが、無理やり答えを考えなきゃいけない。ブログを書けば、コメント欄に今までの人生で考えたこともなかったような指摘や質問が飛んでくる。でも、そこで無理やりひねり出した答えが私の意見だなんだと気づくんです。

宇野 わかるなあ。僕はそれ、ラジオで体験しました。「オールナイトニッポン0」をやらせてもらった時、リスナーからのメールを読んだり人生相談をしたりというのを今までしたことがなかったんですけど、意外と好評で。俺、こういう才能があったんだと気づきました。それが34歳とか35歳のこと。結構いい年になっても、人から気付かされることのほうが多い。

はあちゅう 自分で自分を探すより、憧れの人を見つけたほうがいいと思います。ネットを探せば、この人みたいになりたいなとか、こんな生活したいなって人がたくさん見つかりますから。自分の適性や自分をどう生かそうかを考えるよりは、この人みたいになりたいと思える人を徹底的に研究して、その人をインストールするつもりで行動する。そこから自分の個性が見つかる。誰かの真似をした時に、それでもにじみ出ちゃうものが個性ですからね。

次回「負の気持ちでしかつながれない日本はインターネットの使い方を間違えている」は2/26公開予定。

構成:稲田豊史 撮影:牧野智晃

この連載について

自分を仕事にする生き方」がこれからのスタンダードになる 宇野常寛×はあちゅう

宇野常寛 /はあちゅう

「ネット時代の作家」のスタイルを作り上げることをライフワークとするはあちゅうさんと、自らが代表をつとめる「PLANETS」から、雑誌、書籍、インターネット番組と積極的に発信を続ける評論家の宇野常寛さん。二人は「自分」の価値をいかに築き...もっと読む

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E_Kappasan 宇野さんとの対談 #はあちゅうセミナー https://t.co/wXNEnqnPwl 6ヶ月前 replyretweetfavorite

aMana_BBB https://t.co/sAtLtbDWjlはあちゅうさん「この人みたいになりたいと思える人を徹底的に研究して、その人をインストールするつもりで行動する。そこから自分の個性が見つかる。誰かの真似をした時に、それでもにじみ出ちゃうものが個性ですからね。」 7ヶ月前 replyretweetfavorite

kjaerholm とりあえず背景にソフビが写りすぎという。宇野さんの趣味だろうけど。/「 自分を仕事にする生き方」がこれからのスタンダードになる 宇野常寛×はあちゅう https://t.co/aqmvoIw39v 7ヶ月前 replyretweetfavorite

kotonawriter なるほど、単なる自己分析だけでは自分を理解したことにはならないのですね🤔 https://t.co/luw5gJBvnC 7ヶ月前 replyretweetfavorite