書店バイトで『夫のちんぽ』に「カバーおかけしますか?」「そうですね」って(笑)。

cakesの連載でもお馴染み『臆病な詩人、街へ出る』を上梓した詩人・文月悠光さんと、衝撃のデビュー作『夫のちんぽが入らない』から一年、初エッセイ『ここは、おしまいの地』を上梓したこだまさん。
対談の後編は、詩と小説、それぞれの視点で他者を見つめるお二人が、それぞれの展望について語り合いました。

いつもビクビクしながら飛行機に乗っている

文月悠光(以下、文月) しかし、こだまさん、これだけ前作(夫のちんぽ)がヒットしても、まだ家族バレしてないのってすごいですね(笑)。

こだま もう本当は薄々気づきながら、見ている状態かもしれないなとは思ってるんですが。

文月 あっ、本当ですか。

こだま いや、こんなに反応がないっていうのは奇跡的なので、もしかしたら怪しんでもいいんじゃないかなと……。

文月 内心では「ちょっと気づいてほしい」という気持ちも……?

こだま それは一切ないです。気付かれたら終わりだと思っているので、その日まで後悔のないように書きます。

文月 『ここは、おしまいの地』の中でも、旦那さんを残して今日みたいに東京に来られるときは、毎回心臓が破裂しそうになる、と書かれていて。小さなことでビクビクしがちなこだまさんが、なぜか隠れて東京行きの飛行機に乗っている。臆病さと大胆さのギャップが、読者にとってはおかしくてたまらない。「なにやっているんだろうこの人」っていう(笑)。

ここは、おしまいの地
『ここは、おしまいの地』

こだま はい。一度、悪天候で飛行機が遅れた時など、家に帰れなくなったらどうしようと不安でお腹が痛くなってしまって大変で……。

文月 本の中でも「あなたは大胆なんですか? 慎重なんですか?」と問われたと書いてありましたね。読んでいても二人のこだまさんがいるように感じました。他人に対して臆病になっているこだまさんと、大変な事態を客観的な目で書こうとしているこだまさんと。

こだま 東京にきているときは「私は作家の活動をしているのかな」って大胆な気持ちになって、でも家に帰ったら本当にビクビクしてます。こんなに緊張してハラハラするんなら、家にこもってたらいいのにって思うぐらい。

文月 私だったら、大胆で自由な自分を生活の主軸にしたい、って考えてしまいそうです。そういう切り替えの可能性は考えませんか? それとも、普段は抑圧があった方が安心するとか(笑)。

こだま そういう性分なのかな(笑)。でも、今回の本なら別にいいんですけど、前の本(『夫のちんぽ』)を教えるっていうのは、流石にまずいなと……。

文月 それはそうですよね。これって書き手にとっては、とても大きな問題で。一回限りの告白記事とか衝撃的な内容のブログはたぶん誰でも書けます。ただ、同じ名前で継続して書く場合には、一度出したものはもう引っ込められない。何を書いても、過去の作品との比較で読まれてしまう、という問題がくっついてきますよね。

こだま だから覚悟して出さないとならないですよね。

フェミニストとして告発したつもりはなくても

こだま 文月さんも『臆病な詩人、街へ出る。』で、セクハラを受けた話を書かれてましたけど。


『臆病な詩人、街へ出る。』

文月 そうなんです。「私は詩人じゃなかったら『娼婦』になっていたのか?」というタイトルで、一足先に今でいうMe Tooのような内容を書いていて……。

こだま たしかに!

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入らない」ふたり—文月悠光×こだま対談

こだま /文月悠光

『夫のちんぽが入らない』! 驚きのタイトルを上梓するこだまさん。匿名で執筆活動をするこだまさんと、著書『洗礼ダイアリー』や、cakesの連載『臆病な詩人、街へ出る。』など、エッセイストとしても活躍中の詩人・文月悠光さん。自身の身の上を...もっと読む

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luna_yumi @eshi_ko こだまさんとの対談、後篇もアップされました!📚🌠 こだまさんの執筆活動事情や、本屋さんで働いてみてこんなことがあったよ、というお話😇 ▶︎こだま×文月悠光対談 https://t.co/aOtz7Pf3G4 7ヶ月前 replyretweetfavorite