あれからいろんなことがあった。
だからこそ、胸を張って通り過ぎましょう。
電車に乗った時にすれ違った人がいた。どうもあの人じゃないかしら。よく似てたわと思うけど、振り向いたらドアが閉まっていて、もう見えなかった。
とっさに電車の行き先を確かめたけど、どこで降りるかもわからないし結局それっきり。
そんな話をしてくれた人がありました。
その場では笑っていたけれど、あとでその人から昔もらった手紙を読み返して泣いてしまったんですって。遠い昔に終わった恋なのに、思い出すと今でも泣けてくる。素敵よね、そんな人がいるって。
つきあっていたけれど今はもう別れたふたり。
私も小説でそんな男女の関係を何回描いたことでしょう。
せっかく小説に描くのなら、自分でも好きな男の人でないと力が入らないのね。
なんでこんないい男と別れたんやろうって男に描きたい。思いきりがいい男も悪くはない。でもきれいに忘れようと夢見ながらも、いつまでも尾を引いて胸の中がくちゃくちゃしてしまう、これこそが人間だと思うんですよ。なんの未練もなく、きっぱり別れられるようなら、それこそ小説にはならない。
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