いまやみんなが苦学生という時代がやってきた
突然ですが、みなさんは自分を「苦学生」だと思いますか? お金がない、生活が苦しい、と思うことはあるでしょうか? 2月はちょうど春休みの時期で、バイトに精を出している人も多いと思います。そこで今回は、学生生活にとって欠くことのできない「お金」について考えてみましょう。
学費や生活費のために働きながら勉強する学生は、いつの時代にもいましたが、わたしが学生の頃は、少数派のイメージが強かった。しかし、長引く不況のせいか、いまや学生のほとんどが苦学生と言っていいような状態。短時間で効率よくお金を稼ぐため、性風俗の仕事をする学生が少なからずいることも、クローズアップされるようになってきました。
学生へのインタビューでも、バイトをしないと生活が立ちゆかないと答える人が半数以上にのぼります。お小遣い稼ぎの感覚でバイトしている人は「自分は恵まれている」と語りますし、バイトせずともよい人に至っては「友だちに言えない」と申し訳なさそうにしています。学生なんですから、働かずに済むことは悪いことでもなんでもないのに、それがなんだかいけないことだと思えてしまうほど、バイトすることがデフォルトになっているのです。
世界には、大学の授業料がゼロの国も、奨学金を返還しなくてよい国もあります。羨ましいですよね。学ぶことを、個人が趣味でやっていることと突き放すのではなく、いずれ国の発展に貢献してくれる頭脳・才能を育てることだと考えれば、国が教育にお金を投じることは、むしろ当然のことのように思えます。
しかし日本では、学ぶことは個人的なことであり、自己責任の範疇にあるという感覚が支配的です。ですから、貧困層は勉強する機会を逃しがちですし、どうにか学べる環境を手に入れた人も、バイト三昧でなかなか勉強がはかどらない、なんてことになる。わたしは学生にどんなことでも正直に言ってくれたら許す、と常々言っているのですが、「今日バイトに行かないと、本当に生活費がヤバいので早退させてくれ」とか「土日はずっとバイトで宿題をやるヒマがありませんでした」とか言われることがあって、そうなるともう「学生の本分は勉強! バイトなんか行くな!」とは言えなくなってしまいます。勉強より生活を優先せざるを得ない学生を責めることは、あまりにも酷だと思うからです。
心身を壊すような働き方だけはするな
できる限り学生生活をエンジョイしながらバイトもこなしたいのであれば、時給が高い仕事を探さねばなりません。時給が高いといえば、大きく分けて、家庭教師や塾講師の方面と、夜勤仕事や肉体労働の方面がありますが、どちらを選ぶにせよ無理がたたって倒れてしまっては意味がありません。講師業はすごく神経を使うからメンタルをやられたという人もいれば、夜勤で自律神経がおかしくなったという人もいる。自分がどういうタイプの人間かをよく考えた上で、継続してやれそうな職種を選ぶようにしましょう。仲のいい大学院生にすごく時給が良いという理由で火葬場の夜勤をやっていた人がいるのですが「すぐにやめちゃった。やっぱおばけでたら怖いじゃん」と言っていました。いい歳して「おばけ」とか言っちゃうくらい怖がりなのに、なんで火葬場の夜勤を選んだんだ、無謀すぎだろ。職業選択のセンスをやしなっておくことは、いずれやってくる就職活動にも関係するので、たかがバイトと思わず、しっかりやっておくことをオススメします。
それから、働くことを「金のために我慢すること」だと思わせるような職場は危険です。お金を頂くのだから、多少のことは耐えなくちゃ、と思っているうちに、社畜マインドが形成され、搾取されていることにすら気付かなくなってしまうのは、明らかに人生の損失。
いわゆるブラック企業は、仕事内容がひどいのはもちろんですが、そのひどさに反発しないよう社員をコントロールする術に長けています。わたしの教え子に「バイト先がどう考えてもブラック企業だったんですが、辞めませんでした。粘り強く交渉を続けて、学生らしく働けるようにしたんです」と言っていた人がいましたが(すごい!)、これはかなりのレアケースだと思います。みなさんはまだ若く、それゆえ大人の狡猾さに気付かないこともあるので、十分気をつけてください。テストが近いのに休ませてくれないような職場や、休むとペナルティが課せられる職場は、ブラックというか深すぎる闇。すぐに逃げた方がいいですよ……。
「投資」と「浪費」を混同してはダメ
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