21世紀のお金との正しい付き合い方

モノをお金でやり取りする“資本主義”から
コトを時間でやり取りする“時間主義”
モノを信用で直接やり取りする “記帳主義”
最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ ー。
今、お金を中心に大きな転換が起こっています。
お金はこれからどうなるのか?
その歴史と仕組み、変化、未来まですっきり解説!
山口揚平著「新しい時代のお金の教科書」を特別公開します。

 いよいよ連載も最後が近づいてきました。今回はこれまでの話を踏まえて私達がこれからどうやってお金と付き合っていけばよいのか、あるいはもっと大きな目線からどういう指針で生きてゆけばいいのか、についてまとめましょう。

 お金のなくなる日がやってくる?

 お金は人間にとって不可欠な発明だった、とこの連載の最初に書きました。人間は、「個性」と「社会性」を軸として、分業と交換を通して発展してきました。それが生物としての生き残り戦略だと述べました。

 そして人類にとって分業のメディアとしてお金は最大の発明品でした。

 前々回では20世紀までのお金でモノを流通させていた時代から、社会的欲求であるコトを満たす方法として時間を通貨として用いる時間経済を取り上げました。そしてお金でなく直接的な信用で価値をやりとりする記帳主義経済もやってきます。最後に信用を使って信用を得る信用主義経済の到来も示唆しました。

 ではもう一度、そのような人類の本質に立ちかえって考えてみた場合、本当にお金がなくなることはあるのでしょうか?

「お金のなくなる日」とは、お金を一切使わない、信用を持って信用(価値)を作るという新しい経済システムです。経済とは経世済民の略であり、単にお金を増やすことではありません。ですからお金がなくなることと経済がなくなることは同じことではありません。

「いずれお金はなくなるよ」、と私が人々に言うとビットコインですか? とよく聞かれるのですがそうではありません。それはお金が電子上に溶けこんだ世界に過ぎません。本当にお金のなくなった世界はお金がないにもかかわらず、価値が生まれそれが循環している経済システムのことなのです。

 今回は、まず、お金がなくなった経済、つまり信用主義経済で起こることを、第一章で取り上げた「人間とは何か?」という根源的な問いからあらためて紐解いてみたいと思います。人間について理解した上で、これからの世界でみなさんがどのように「お金」とかかわっていくべきか、一緒に考えてみましょう。

 人間とは何か? をあらためて問う

 信用主義経済における私達は誤解を恐れずに言えば「人間をやめる」必要があります。やめるというのは確かに語弊があります。それは、あなたや私が人間以上の存在になるということです。今、あなたは自分自身を一体何であると考えていますか? 名前のついた個人でしょうか? それとも人間(人類)でしょうか? あるいは人間以上のもの(例えば意識)でしょうか? あなたのアイデンティティ(自分がなにものであるか? という認識)はそのどこにあるでしょうか? この風変わりな質問がお金の未来を切り開く最後の問いです。



 AIの隆盛やそれがもたらすシンギュラリティの世界で、「人間の知能がAIに追い越される未来は近い」という予測がなされ、「そんな中で人間が担うべき役割とは何か」そしてそもそも、「人間とは何なのか」というのが重要なテーマになっています。

 私がこの「人間とは何か?」という問いを投げかけられた際にはこう答えます。「人間とは、情報に吸着した意識の集合体」だと。情報とは、「記憶」、「肉体」、それから「知識」の三つです。「記憶」は過去、「肉体」は現在、「知識」は未来にあたります。この三つの情報に対して意識が吸着していった結果、形成されているのが私達、人間(個人)であるというのが私の見解です。これは第一章で述べた生物種としての人間とは違う捉え方です。

 記憶・肉体・知識様々な情報の中で自分の意識が特に強く吸着している部分は人それぞれ違います。そこに個性が生まれます。例えば多くの人は、過去の記憶に意識が吸着して囚われていますし、アスリートのように肉体の細かい情報に意識が吸着している場合もあります。かつて武井壮さんがミリ単位で身体をコントロールできると言っていましたが、そのような個性もあります。知識ばかりに意識が向いている場合もあります。あなたはどのような情報にどれくらいの意識を吸着させているでしょうか? それがあなたという人間の個性を形作っています。個性とはすなわち情報と意識の吸着パターンにすぎないのです。だから私は生まれながらの個性というものを認めません。それは偏見にすぎないとさえ思っています。

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山口揚平

モノをお金でやり取りする“資本主義”から コトを時間でやり取りする“時間主義” モノを信用で直接やり取りする“記帳主義” 最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ —。 今、お金を中心に大きな転換が起こってい...もっと読む

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コメント

yuto0531 経済システムは人間の幸福度を最大化する方向へ変化していくのだと思う。 2年弱前 replyretweetfavorite

thinktink_jp "人間(個体)とは「意識が吸着した情報の集合体」、まずはこの点をおさえて、その上で、お金がなくなる、ということの意味を考えてみ..." https://t.co/jY5jypp2ru https://t.co/g 2年弱前 replyretweetfavorite