ひとりで頑張らないで。
出会いを活かす「行き会いの達人」になりましょう。
今は女の人も、男の人と肩を並べて仕事をするようになって、ますます頑張ってらっしゃる方も多いのではないかしら。とはいえ頑張りすぎて、中には体を壊して休職される方もいるというから大変です。
頑張る人って、すごく人がいいのよ。喜んでもらいたいという気持ちが人一倍強い。女の人のいいところではあります。ただ、何もかも自分だけで抱え込んで、くたびれ果てては何にもなりません。
「あの子だったら、このくらいの残業、頼めばすぐにやってくれるよ」
あてにされるのはいいけれど、それが度を越して侮られるようになってはいけない。頼む方は厚かましいとは思ってないの。「やってくれるなら、これくらいはいいかな」って思ってしまうのね。
これが当たり前になっては、あとから来る後輩も大変です。みんなでおしゃべりしあって、ひとりで頑張るということがないようにしましょうね。
私も金物問屋で長いこと事務員をしてましたけど、会社に入ってまずご主人に言われたのが「お客を笑わしなはれや」ということでした。さすが大阪の商売人。相手をどのくらい笑わすかで売り上げまで変わってくるというんだから、みんな、口八丁手八丁。商売の面白いところも、厳しいところも、いっぱい見ました。
「なんで、みんな、こんなによく笑うんですか?」
ある時、私が訊ねたら、ご主人が言いました。
「それはあんたの思い違いや。笑うんじゃない。笑かすねん」
営業先で話をするとなったら、気も使うし、神経も張るものです。最初は世間話だってままならなかったのが、一生懸命しゃべったら、お客さんの顔つきがだんだんほころんできて「せやなあ。そういう考え方もあるなあ」なんて言われたりすると、ものすごく嬉しい。なんで嬉しいかって言ったら、うまいこと口で言い負かしてやったというんじゃない。相手の心の内に入れてもらえたのが嬉しいのね。それには「笑かす」のが一番。
ひとつの商品を売り込もうとしても「そんなん売れへん売れへん」、頭ごなしにこう言われることだってある。そこを「いや、最近これ、ちょっと変わってきたんですよ」って言えば「変わってきたって、どこが?」ってなりますよね。うまい営業の人は、そうやって流れを止めない言葉の使い方を心得てる。そのためのいろんな言葉を知ってるし、何を言ったら気持ちが動くか、ちゃんと相手の顔色を見てますよ。自分だけでいっぱいいっぱいだと、これがなかなか出来ない。
いい流れは、そうやって出会った人と一緒につくっていくものなんですよ。ひとりでがむしゃらに頑張ればいいというものじゃない。出会った人と持ち札を交換しあいながら、いい流れをつくっていくこと。これを「行き会い」と言うんです。
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