渡辺由佳里
「
あなた おかあさんではないから」他人の苦悩を想像で代弁すると〝傲慢〟になる
「あたし おかあさんだから」という楽曲の歌詞が、ネット上で炎上しています。絵本作家の「のぶみ」さんが、子育てする母親の気持ちを作詞したものですが、なにがいけなかったのでしょうか。
アメリカ在住の作家・渡辺由佳里さんが、当事者の痛みを代弁することの難しさをを考えます。
「あたし おかあさんだから」という歌詞が炎上している。
ソーシャルメディアで炎上を知り、作者と歌詞について検索し、「これは炎上してもしかたないな」と思った。
すでに多くの人がしっかりとした反論を書いているので、私が書く必要はないと思って沈黙してきたが、ことに男性のなかに「愛情あふれる詩にケチをつけるのは、読解力がないからだ」「こんなことにケチつけるのはおかしい」といった反論に同感している人が多いようなので、作者が母の苦しみに寄り添うつもりで書いたという詩に、なぜ女性たちが怒っているのか、考えてみたい。
この連載について
アメリカはいつも夢見ている
渡辺由佳里
「アメリカンドリーム」という言葉、最近聞かなくなったと感じる人も多いのではないでしょうか。本連載では、アメリカ在住で幅広い分野で活動されている渡辺由佳里さんが、そんなアメリカンドリームが現在どんなかたちで実現しているのか、を始めとした...もっと読む
著者プロフィール
エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家。助産師、日本語学校のコーディネーター、外資系企業のプロダクトマネージャーなどを経て、1995年よりアメリカ在住。
ニューズウィーク日本版に「ベストセラーからアメリカを読む」、ほかにFINDERSなどでアメリカの文化や政治経済に関するエッセイを長期にわたり連載している。また自身でブログ「洋書ファンクラブ」を主幹。年間200冊以上読破する洋書の中からこれはというものを読者に向けて発信し、多くの出版関係者が選書の参考にするほど高い評価を得ている。
2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。著書に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、糸井重里氏監修の『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)、がある。