児太郎への伝授
2016年の玉三郎は、前年に続いて歌舞伎座で一年を始め、昼の部は『茨木』、夜の部は鴈治郎の伊左衛門で『吉田屋』の夕霧に出た。
2月は博多座へ獅童と児太郎を連れていき、特別舞踊公演をした。『船辨慶(ふなべんけい)』では玉三郎が静御前・平知盛の霊 で、児太郎が源義経、獅童が武蔵坊弁慶だった。
続いて『正札附根元草摺(しょうふだつきくさずりびき)』は獅童の曽我五郎時致、児太郎の小林妹舞鶴、最後が児太郎との『二人藤娘』だった。
父・福助が歌右衛門襲名が決まりながらも病に倒れ、実質的に舞台上での後ろ楯を喪った児太郎を、玉三郎は前年から面倒を見るようになっていた。
七之助がかなり成長したので、その次の世代として児太郎を選んだのであろう。
吉野川マスターコース
2月の博多座以後、玉三郎は舞台に登場せず、九月になって前年同様に秀山祭に出演した。
しかし昼の部には出ず、夜の部で『妹背山婦女庭訓』の「吉野川」で太宰後室定高をつとめた。大判事清澄が吉右衛門で、久我之助清舟が染五郎、太宰息女雛鳥が菊之助という配役で、まさに吉右衛門と玉三郎が染五郎と菊之助に藝を伝授するマスターコース的な様相を呈した。
そのあと、染五郎と松緑の『らくだ』があり、玉三郎の『元禄花見踊』で打ち出しとなった。
10月の歌舞伎座は橋之助が八代目芝翫を襲名した月で、玉三郎は夜の部だけに出て、口上に出て、『藤娘』を舞った。
歌舞伎座が26日に千穐楽となると、玉三郎は九州、熊本県山鹿市にある八千代座へ飛び、29日から11月3日まで特別舞踊公演で、『秋の色種(いろくさ)』と『元禄花見踊』を舞った。
5人の道成寺
12月の歌舞伎座では、前年同様に若手を集め、獅童、松也、中車、勘九郎、七之助、梅枝、児太郎らが出た。これまでの歌舞伎座は8月が三部制だったが、この年は6月と12月も三部制となった。
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