買い物リストを書いてもその買い物リストを忘れる人

松井教授は、かつて学生に、スーパーで買い物をして、その行動の一部始終を記録してもらうという授業を行ったことがあるそうです。寄せ鍋の材料を買おうとした学生が、スーパーに入って最初に行ったのは、何の売り場だったでしょうか。人の記憶とマーケティングについて考えます。

皆さんは、買い物に行く前には、何を買うのか、スマホとか紙でリストを作りますか? ぼくはたまに買い物リストを作ることがあります。でも書いた紙を忘れて出かけることが少なくありません。

「意味ないじゃん!」と思うかもしれません。でも過去の研究によると、買い物リストを作る方が、作らない方よりも、買い忘れが少ないそうです。さらに言うと、家族など誰か別の人が作った買い物リストを渡されたときより、自分で作った方が、買い忘れが少ないそうです。

そうなんです。たとえ買い物リストを忘れたとしても、買い物リストを作るという作業をすることで、何を買うべきなのか、という記憶が残りやすいのです。

話を変えましょう。皆さんは、お店の棚を見ているときに「あっ、これ買わなきゃと思っていたんだ」と思い出すことがありませんか? 例えば、ワサビの売り場で、「ワサビを使い切ったので買わなきゃ」と思っていたことを思い出すといった感じです。電球とか電池とかもそうですね。

なんで買い物リストとワサビの話をするのでしょうか? それは今日のトピックである記憶に関わるからです。買い物リストや売り場の棚は、正確に言うと外部記憶と言います。外部記憶っていう言い方、少し変だと思いませんか? 記憶はアタマの「内部」にあるものですよね。それなのに「外部」にあるってどういうことでしょうか?

買い物リストは、何を買うべきなのかという情報を、アタマではなく、紙なりスマホに保存することで、お店でもれなく思い出させることが可能です。また売り場の棚は、買い忘れたモノについての記憶を喚起してくれます。記憶がまさに外部にあるのです。

外部記憶はマーケティングにどのように関わるのでしょうか? それぞれについて考えてみましょう。

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松井剛

何気なく使っているマーケティング用語。そのことばの裏には、あなたのビジネス、さらには世の中の見方を変える新たな視点が隠れています。一橋大学経営管理研究科・松井教授が、キーワードをゆったりと、しかし的確に解説するこの連載。他人の成功体験...もっと読む

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コメント

matsu_take 今回は外部記憶についてです。 https://t.co/Srrh0KTfEH 3ヶ月前 replyretweetfavorite

granat_san 面白い話だった。 3ヶ月前 replyretweetfavorite