ラジオパーソナリティは毎日同じことをやってはいけない
高橋晋平(以下、高橋) 僕はおもちゃとかゲームをつくっていますが、おもちゃって特に必需品ではないので、売れるためには根源的欲求がないといけない。
だからいつも、世の中に面白い情報はいっぱいあるけれど、売れるためには、お金を出しても欲しい物だけメモしようということを言っています。
本にある「欲しいと思う物事をネタとして集めよ」というのは、そういうことなんです。
吉田さんは職業が違いますが、次から次へとしゃべるネタが場所や相手に応じて出てくるじゃないですか。
だから、インプット量とかインプット力がめちゃめちゃ高いんだろうなと思っていて。それって好きだからなのか? 生きてたら勝手に吸収しているのか? 何か仕組みを持っているのか? 今日はそこをお聞きしたいのですが。
吉田尚記(以下、吉田) インプットの方法ですか……。 実際意識はしていないですね。アプトプットの要請があった時に初めて考えるので、普段からインプットしようという意識は、少なくとも今はあまりないです。
ただ、そもそもあったかどうかでいうと、すでに習慣化されてしまっているのかもしれませんね。
高橋 習慣化ですか?
吉田 習慣化されると意識しないじゃないですか? 僕がニッポン放送に入社して、一番初めにアナウンサーをやらなければいけないとなった時、担当教官をしていただいたディレクターさんがものすごい根源的な人で、かなり影響を受けているかなと。
そのディレクターさんというのは、鴻上尚史さんのオールナイトニッポンとかやっていいて、「10回クイズ」をつくった人なのですが……。
高橋 神のような人ですね。
吉田 そのディレクターさんが言っていたのが、「ラジオパーソナリティは毎日同じことをやってはいけない」ということなんです。
例えば、お店にしても、ほうっておくとみんな同じところに行きたいんですよね。でも僕は同じ店に2回入ったことが、ここ20年で何度あるだろうというぐらいなんです。
もちろん自分の家とか、職場の一番近くにあるコンビニは仕方がないので行きますが、はじめて行った街で休憩時間が2回あって、その街にコンビニが2軒あり、コンビニに行けるタイミングが2回あったとすると、同じところはいかない。
高橋 すごいですね。
僕は全くその逆で、『にゃんこ大戦争』という育成ゲームを5年間一日も欠かさずやってます。
吉田 それもすごいです(笑)。
高橋 本もいっぱい読むよりも一冊を何回も読みます。
はじめての本は読むのが大変じゃないですか。でも、何回も読んでいるとスラスラ読めてくる。それが楽しいっていうか……。
吉田 すごい(笑)。本当に発想が全く逆ですね。
高橋 吉田さんは常にインプット量が半端なくて、人と話す時にそれが紐づいて、次々に出てくるんですね、きっと。
吉田 たぶんそんな感じですね。
インタビューとかでも、面白かった話を教えてくださいと抽象的なことを言われるよりは、ここにバターナイフがありますね、と具体的に言われたほうが、いろんなことが紐づいて面白い話を思いつく可能性が高いと思います。
それはラジオパーソナリティとして人の話を聞く時も同じです。
そもそも僕は、例えば「音楽ってどういう意味があるのかなー」っていうような「興味」をリスナーに満たしてもらうのが仕事だと思っているのですが、そこでゲストのミュージシャンに「音楽って何ですか?」みたいに概念的だったり抽象的なことを聞くと、相手も用意されてきた答えを話してくる。
これってめちゃめちゃ意味がないんですよね。そんなのだれも聞きたくないですし……。
そんな時は具体物から入るのが絶対的にいい。
僕はこれを「答えやすい質問」と言っていますが、例えば、高橋さんに質問するとして、「あなたにとっておもちゃとは何ですか」と聞かれると答えにくいですよね。
ただ、「一番最近開発したおもちゃってどういうものですか」と聞いたほうがめちゃくちゃ答えやすくないですか。
これはあくまでインタビュー論なので、発想力とは違うかもしれませんが、インタビューって、「お題である○○ってなんだろう」というのはふわっと思っているんですが、それをそのままぶつけても仕方ないところがあって。
なので、そこから抽出して、近そうだけど具体的で答えやすい物って「何だろう?」って常に考えたりしています。常に疑問を持っているというか……。
人はなんでネクタイをするのか?
高橋 なるほど、僕はこの本では、「何が欲しいか」をアンテナとしてネタを集めていますが、吉田さんはそれが「疑問」なんでしょうね。
吉田 そうかもしれません。ただ、世の中、疑問がスゴく禁じられていると思うんですよね。「いろんなものに疑問を持つな」という無言のメッセージが出ているというか、「考えても仕方ない」というか。
例えば僕はネクタイとかがいまだに疑問なんですよ。
高橋 ネクタイ?
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この連載について
一生仕事で困らない 企画のメモ技(テク)
ヒット企画を生み出すのに特別な才能なんていりません。必要なのはメモの技術です。本連載は、∞プチプチなど大ヒット商品を数々生み出してきた高橋晋平氏の最新刊『一生仕事で困らない 企画のメモ技(テク)』から、クリエーターでも何でもないごくご...もっと読む