第1回では、夢をかなえるためには自分をよく知ること、すなわち自分に取材することが大切だということを書きました。第2回では、自分への取材の基本となる「日記」をつけることの大切さをお伝えしていきます。
くり返しの反復復習をしている人は強い
日記をつけるということは、その日の自分の行動や考えたこと、感じたことを振り返るということです。学校では授業中にノートをとるし、会社では会議の議事録をとりますよね。それをあとで見返すことで、学んだことや考えたことへの理解は深まっていきます。日記も同じことです。この「書いて見直す」習慣を、ふだんの暮らしの中では疎かにしている人のほうが多いのではないでしょうか。
人生は勉強ですし、一つの壮大なプロジェクトです。深い学びを得たり、いいプロジェクトにしたければ、いい勉強やいいプロジェクトを行うために必要なことと同じことをしてみてはいかがでしょうか。
学生時代、勉強で一番大切なのは復習でした。勉強が得意な人は、必ず復習をしているし、予習よりも復習に時間をかけますよね。そして、記憶を定着させ理解を深めるにはくり返しくり返し復習することが必要不可欠です。脳にはつねに新しい情報が入ってくるので、一度理解し、学んだことも翌日にはあっさり抜けていきます。だからこそ、くり返しの反復復習をしている人は強いのです。
この方法を人生に応用するなら、やるべきことは「1日の終わりにその日の復習の時間を持つ」ことではないでしょうか。
私は幸か不幸か、2歳のときから「将来は本を書く人になりたい」と言っていました。2歳のころの記憶はさすがになく、親からそう聞いているだけですが、9歳のときには明確に「作家になりたい」という意識がありました。そして、なれるかどうかはわからないけれど、もし夢が実現したときに困らないように、自分の生活を将来の自分のためにたくさん書き残しておかなくちゃ、と思っていたのです。そのころから日記をつけることが私の人生に欠かせない習慣になりました。
数十分話した人の顔と名前さえも翌日には忘れてしまう、悲しいくらいの記憶力のなさには当時から自覚があったので、小学生のころの話をいつか未来の自分が書きたいと思ったときに、手がかりを残しておかなくてはと思っていたのですね。料理の仕方は将来の自分が考えてくれると信じて、素材だけはたくさん残しておこうと、当時の日記には箇条書きのようにその日あったことや考えたことが綴られています。
今読み返すと意味のわからないことも多いのですが、当時悩んでいたことや気になる男の子の名前など、今の私の記憶からはすっぽりと抜け落ちていることばかりで、おもしろく読めます。
また、当時の私にとっては生きるか死ぬかの悩みのように思っていたことも、今の私はほとんど覚えていないことから、悩みというのはある程度時間が解決してくれるものだという学びも得られました。9歳の私が「いつか結婚したい」と書いている男の子の名前は日記を読むまで忘れていたし、今その人がどこで何をしているかは、今の私の人生にとってはさほど重要じゃないんですよね。
こんな風に過去の自分を見つめることが、今の自分の人生の充実や成長に気づかせてくれることもあります。日記というのは書いて終わりという人も多いと思うけれど、本当に大事なのは、「見返す」という作業ではないでしょうか。もちろん、日記を書くということはそれ自体が自分を見つめ返す時間になり、自分の人生を高めてくれると思うのですが、書くだけで終わらせずに読み返すと、2倍、3倍の効果があると思います。
日記は読み返すたびに新しい発見があります。最近、昭和の人の暮らしぶりを撮った写真がネットで話題になっているのを見かけました。イベントごとなど何もない、ただの生活風景です。でもそういったものほど、記録が残っていなくて貴重なんですよね。同じように、今の私たちが「こんなものは未来に残すほどでもないな」と思っているささいなことほど、時がたてばどんどんかけがえのない瞬間になっていくのだと思います。そしてそういったことを見返すたびに、日記という形で記録をつけていた自分に感謝することになるし、自分の成長を実感できると思うのです。
日記に何を書いたらいい?
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