報復の連鎖——私たちはもう第三次世界大戦のなかにいるのかもしれない
イスラム国と欧米の間で、「報復の連鎖」が途切れることなく続いてしまっています。あるロンドンの有識者は「もはやどちらが良い悪いの問題ではない。この連鎖のせいで、特に、2015年1月7日の風刺画事件以降(「シャルリー・エブド」の絵師が襲撃を受けて殺害された事件)は、欧米の雰囲気は〝対テロ戦争〟から〝対ムスリム戦争〟になってしまっている」と評していました。そして、「大勢の参加した反テロのデモも、表現の自由のためのデモと、半ば同一視されて、全体として反イスラム・デモの様相を呈してしまっている」と言います。
ムスリム側も、ムスリム関係機関が「イスラム教はテロを認めていない」という声明をいくら出しても、かき消されてしまっている印象です。この雰囲気を懸念したからこそ、オバマ大統領も、2月18日に自ら主催した対テロ・サミットで「(我々の戦いは)対テロ戦争であって、対イスラムの宗教戦争ではない」と、あえて強調したのだと思われます。
結果として、過激派ではない一般のイスラム教徒までもが、迫害される危険を感じて、反発感情を強めてしまってきているようです。不安と反発が呼び合って、誰もがいかにもそうなりそうだと懸念し、また、誰もがそうなってはいけないと願う、明らかに愚かな二項対立に事態が収斂していこうとしています。
そして、あるシンポジウムの合間の立ち話で、ある紳士が「過去の世界大戦は、通常兵器による正規軍同士の戦闘が主で、開戦日も終戦日もはっきりしていた。しかし現代の戦争は、生物兵器も含め、一方的で無差別なテロ行為が攻撃手段である。テロ集団が民間人に対して一方的に武力行使する。日常生活全体が戦場になる。報復の連鎖が続いてエスカレートしていくなかで、いつの間にか戦争状態に陥っていることになるから、開戦日も終戦日もはっきりしない。我々はもしかしたら、もうすでに第三次世界大戦のなかにいるのかもしれない」と話していたことが強く印象に残っています。
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