プレゼンは重視しない!?イギリス流教育スタイルと学力の「フェアな」評価

現役官僚の滞英日記』の刊行を記念した特別連載、第6回のテーマはイギリス流の教育スタイルと学力の「フェアな」評価です。欧米ではプレゼンが盛んで、話し上手が成績が良いようなイメージがあるかもしれません。しかし、橘さんによると実はイギリスの教育現場ではプレゼンよりもライティングのほうが重視されるのだとか。

君臨するか、受け止めるか。教え方のスタイル

 僕が通うLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス)を含め、イギリスの大学はおおむね10月に新学期が始まります。僕が所属しているクラスは30人ほどで、7割くらいが3〜4年の社会人経験のある20代後半、2割くらいが学部から直接進学してきた20代前半の学生です。欧米・南アジア・ラテン系の若者は本当に大人っぽく見えますので、『キャプテン翼』のロベルト本郷みたいなひげをしていても「25歳です」ということがあります。

 近年、英米の有名大学院では半分が中国人留学生の場合も少なくないのですが、僕のコースでは中国人は1名(学部卒女性)だけでした。日本人も僕の他に学部卒女性が1名だけです。その他ブラジル、ドイツ、インド、アメリカ、オーストラリア、ペルーなどの国々から2〜3名ずつ、イスラエル、フランス、ネパール、オーストリア、韓国、ガーナといった国々から1名ずつという構成です。アフリカ系・中国系が少なく太平洋やカリブの国の方々はおられないものの、国籍間のバランスがとれたクラスになりました。担当の教授陣はドイツ・アメリカ・イギリス出身です。

 僕はLSEの、社会科学系のコースに所属しています。たとえば「公共経営論」という授業を履修すると、1週間に講義が60分1コマ、学生同士で議論を行うゼミ演習が90分1コマあり、それぞれのコマで事前に読んでこなくてはならない論文や書籍が指定されます。1コマあたり英文30〜50頁くらいのもの15点が必読文献、その他に読了が望ましい文献が20点ほど指定されます。

 ほとんどの文献は電子化されていて大学のIDがあればパソコンで読めるようになっています。ですから「誰かに借りられていて読めませんでした」といった言い訳は通用しません。一部電子化されていない書籍も図書館にコピーがたくさん置いてあります。

 たいていの学生は、1週間で5〜6コマ履修しています。1学期は10週間、2学期にわたる科目ならば20週間あります。その間に指定されたすべての文献が試験範囲となります。さすがに精読まではできないので、「スマート・リーディング」と言って、要約文やパラグラフの冒頭の文を重視して、要点だけをかいつまんで理解する速読法が推奨されます。その上、それぞれの授業で4週間に1度、2500ワードの小論文の課題が出ます。

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現役官僚の滞英日記──EU離脱にも揺るがない、英国エリートたちの生存戦略

橘 宏樹

欧州最古の名門総合大学「オックスフォード」、英語圏最高峰の社会科学研究機関「LSE」の両校に留学した若手官僚が英国社会のエートスをリアルタイムに分析。大英帝国が没落してなお、国際的地位と持続的成長を保ち続けるイギリスに “課題先進国"...もっと読む

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