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第4回】最新脳科学で見えてきた 睡眠と覚醒のメカニズム

いまだ謎の多い睡眠について、最新脳科学の研究が進む。体内時計と睡眠負債を軸に、睡眠と覚醒の状態を決めるメカニズムに迫る。

 「人はなぜ眠るのか。実はそのメカニズムはよく分かっていない。解明できればノーベル賞ものだ」

 前出の柳沢教授によれば、われわれにとって身近な睡眠は、今もなお多くの謎に包まれている。

 柳沢教授は1998年に、睡眠の謎を解く手掛かりとなる重要な物質を発見した。オレキシンだ。睡眠と覚醒という二つの状態は、シーソーのような関係にある。どちらの状態になるかに大きな役割を果たすのが、この物質だ。

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 上図で示したように、睡眠状態は、睡眠中枢が覚醒中枢やオレキシンを抑制してつくり出される。一方で、覚醒状態は、オレキシンが覚醒中枢を活性化し、覚醒中枢が睡眠中枢を抑制することでつくり出される。

 オレキシンを活性化させる要素は三つある。栄養状態(空腹かどうか)、情動(激しい感情)、そして体内時計だ。

 空腹になると血糖値が下がり、オレキシンが活性化して脳が覚醒する。狩猟時代から、空腹時は食料を確保するために覚醒している必要があったのだ。また、激しい感情を抱くときにもオレキシンが活性化される。情動をもたらす脳内の扁桃体が、強い感情を非常事態だと判断するのである。

 もう一つ、睡眠・覚醒状態に大きな影響を与えているのが、体内時計と睡眠負債のバランスだ。

 体内時計は24時間前後のサイクルを持ち、メラトニンやコルチゾールなどのホルモンを分泌することで、睡眠と覚醒を制御している。オレキシンも体内時計によって制御されている。体内時計の生体リズムは起床から約4時間後に1度目の覚醒のピークを迎え、約8時間後に停滞する。そして14時間後に再びピークを迎える。

 一方、「【第2回】最新脳科学で覆された睡眠の通説 知っておくべき六つの新常識」で説明したように、人は覚醒すると、睡眠負債が増えていく。体内時計と睡眠負債がせめぎ合うことで、睡眠と覚醒のスイッチが切り替わる。例えば、体内時計の生体リズムが停滞する昼すぎの時間帯は、睡眠負債による疲れが上回るため、眠くなるのである。十分な睡眠を取らないと、睡眠負債がしっかり減らずにどんどん蓄積していくため、慢性的な眠気に悩まされるようになる。

 このように、睡眠と覚醒という二つの状態は、複合的な要素から働き掛けを受けており、極めて複雑なのだ。

 いまだ知られていないことが多い睡眠だが、最新の研究成果が、謎を徐々に解明しつつある。

※ 『週刊ダイヤモンド』2017年7月1日号より転載

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睡眠とは何か。現代科学はこの問いに明快な答えを持っていない。しかし、近年の脳科学の進歩によって、睡眠のメカニズムが少しずつ解明されてきた。今では、睡眠をおろそかにすると命に関わること、一方で、睡眠の質を高めれば日中のパフォーマンスが向...もっと読む

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