新しい結婚について考えてみよう
『専業主婦は2億円損をする』
結婚の利点と独身の利点
前回は、収入に関係なく、結婚する人はする、という話をしました。
「男性でも年収300万円から結婚できる」というのはいい話ですが、しかしこれは「いつの時代でも、結婚したい男女はそこそこの条件で結婚していく」というだけのことですから、未婚率が急上昇している謎は解けません。その理由を知るためには、「結婚はそのうちしたいけど、いまのままでもいいかな」と思っている広大な“グレイゾーン”でなにが起きているのかを調べなければなりません。
『超ソロ社会』の著者、荒川和久さんは、1987年から2015年までのデータで、独身の男女が「結婚の利点」と「独身の利点」をどう考えているかを比較することでこの謎を解きました。
女性にとっての「結婚の利点」は、1980年代からずっと「子どもや家族をもてる」がダントツの1位でした。ところが近年になって、「経済的余裕がもてる」が大きく伸びて、いまではほとんど変わらなくなっています。
その一方で女性にとっての「独身の利点」は「行動や生き方が自由」「広い友人関係を保ちやすい」「現在の家族との関係が保てる」「職場をもち社会との関係が保てる」がほぼ同じくらいです。時系列では、かつては「友人関係」が女性にとって独身の最大の利点でしたが、これが大きく下がって、「自由な生き方」が重視されるようになったのが目立ちます。
ここまで読んで、「なんだ、やっぱり女はカネじゃないか」と思うかもしれません。たしかにそう解釈することもできますが、これはいまの日本社会で女性が結婚をどのようにとらえているかをとてもよく示しています。
すなわち女性にとっての結婚(およびそれにつづく出産)とは、①自由を失い、②友人と疎遠になり、③家族とのつき合いが減り、④仕事ができなくなる、という「四重の損失」なのです。
そしてこの損失は、たんに「家族がもてる」ということだけで埋め合わせることができません。そこで、「経済的余裕」が結婚の条件として浮上してくるのです。
これで、高収入でやりがいのある仕事をしている女性が結婚しない理由もわかります。
いまの時代は「自由」や「自己実現」がとても大切な価値になったので、経済的な不安のない“ハイスペック女子”にとっては、結婚・出産による損失が大きすぎてとうてい割が合わないのです。
妻子を養うのはもうツラい
それに対して独身男性はなにを求めているかというと、こちらもかなり興味深い結果になっています。
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