美女入門

男の人に尽くすのが好き。だけどそれではモテないと、やっと悟った!

「美女入門」アンアン連載1000回を記念して、最新刊『美女は天下の回りもの』と、文庫『 美女千里を走る』が、絶賛発売中です! cakesでは、記念すべき第1話から、順次特別連載しています。マリコの名セリフの数々、たっぷりご堪能ください。第8話は、1997年12月5日号「年増でも、あのハヅキに教えられ」。「林真理子書店」ほか、全国書店で「特製プレイバック小冊子」も配布中。お見逃しなく。


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美女入門Part16『美女は天下の回りもの』文庫『美女千里を走る』も同時発売!

 私の若い友人のミカちゃんが、このあいだ十センチのピンヒールを履いていた。

 流行だ、流行だといっても、ピンヒールを履いている人を見るのは初めてだった。
 おまけにヴァレンティノのそれは、キリのような細さなのである。私などが履けば、体の重みでたちまちポキッと折れそうだ。ミカちゃんが言うには、奥の方まで甲を入れられるデザインなので、慣れると何でもないんだと。
 テツオは、あのピンヒールを見ると、ぞくぞくっとするそうだ。

「SMクラブの女みたい」

 と言う。
 そう、今回は何の話かというと、このSMの話である。もちろんムチをばしっ、ばしっということではない。精神的SMのことですね。
 私は典型的なM女である。別になりたくってなったわけじゃない。男の人にモテなかったという長い間のトラウマが、私をこうさせたのである。
 私は基本的に男の人に尽くすのが好き。ちょっと冷たくされても、これが私のあるべきポジションかナと、安心するところもある。
 男の人におごられるのに慣れていなくて、すぐにお財布を開く。
 つい最近、ある男の人に言われた。

「キミみたいな金の使い方をしていると、まず恋愛感情は生まれないよ」

 彼が言うには、男はどんな時でも主導権を握りたいものなのだそうだ。それなのに私はおいしい店を選び予約をする。相手に喜んでもらおうと思い、いいワインを選ぶ。そうすると当然のことながら勘定書きが高くつく。私のデイトの相手は、たいてい普通のサラリーマンなので、ちょっと悪いかナアーと思う。そしてトイレに立つふりをして、すみやかに密やかにお会計を済ませておく。
 私は二十代の頃からフリーランスになり、小金を持っていた女だったので、こういうことには慣れているのだ。が、喜ぶ男ばかりではない。中にはむっとする人も出てくるようなのである。

「キミね、どんなことをしても男に店を選ばせなさい。そして男に勘定書きを持たせなさい」

 彼はそして最後に、しみじみとした声でこうのたまったものだ。

「ハヤシさん見てると、本当に男で苦労してきたんだなあと思うよ」

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美女入門

林真理子

ついに1000回を迎えた、アンアン連載「美女入門」。1997年の第1回には、こんな一文があります。「キレイじゃなければ生きていたってつまらない。思えば私の人生は、キレイになりたい、男の人にモテたいという、この2つのことに集約されている...もっと読む

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