ここは東京、大崎。駅から直結の巨大タワービル、大崎ウエピコゲートは今日も大きくそそり立っておりました。
このビルの38階にある医療器具メーカー、ウンタラ・サイエンティフィック株式会社の内部監査室で、瑠雨図奈乃(ルウズナノ)さんは今日も懸命に働いておりました。
何があったか詳しく語るなら、前シリーズを読むと完璧に理解できてオフィスの人気者になれるのでおすすめです。
とにかく瑠雨図さんは仕事があまりにもできないため、上司からあと3か月でなんとかならないとクビだね☆と言われてしまったのでした。
というわけでイニシャルDもびっくりなぎりぎりコーナーで走らなければならなくなった瑠雨図さんなのですが……。
瑠雨図さん「……ええ、……というわけでこんなかんじで、どうお思いでしょうか……」
実際のところ会議中、しどろもどろに話す瑠雨図さんの姿があったのでした。瑠雨図さんのちょっとアレな会議の進行に会議室中がシーンと静まり返りました。
瑠雨図さん『な、なに~……、みんななんか話してよ~……』
とだらだらと冷や汗を流しながら、ちらりと瑠雨図さんは、上司の須玖(スグ)マネージャーの方を見ました。
須玖マネージャー「……」
須玖マネージャーは瑠雨図さんの話も聞かず、めっちゃ自分のネイルを見ています。
瑠雨図さん「あ、あの、みなさん。ご意見は……」
瑠雨図さんが、会議室にいた全員にそう話を振ってみても、しーんと沈黙が続きます。
瑠雨図さん『なに、これ、死にたい』
瑠雨図さんが真冬にも関わらず、めちゃくちゃ汗をかいていると、須玖マネージャーがわざとらしくため息をつきました。
須玖マネージャー「これさ」
瑠雨図さん「あっ、はい!」
須玖マネージャー「言ってる内容わけわからないし、そもそもミーティングする必要あるの?」
瑠雨図さん「!!!!」
ずさっと大きな刃が瑠雨図さんの心に刺さりました。
瑠雨図さん「え、あ、その……。マネージャーが会議開けっておっしゃっていたので……」
もにょもにょっと瑠雨図さんは言いました。 マネージャーはまた深いため息をつきました。
須玖マネージャー「たしかに開けって言ったけど、もっと意味のある会議を開きなさいよ」
瑠雨図さん「は……はい~……」
そう言いながらも瑠雨図さんは、自分がちっちゃく無くなっていくような気がしたのでした……。
瑠雨図さん「というわけなんですよ……」
げっそりとやつれた瑠雨図さんは、ずんずん先生のオフィスでそう言うのでした。
ずんずん先生「なるほど、上司に意味のない会議はやるなと言われたと……。いや上司、まったくもってその通りのことを言っていない?」
瑠雨図さん「うぅ! ずんずん先生までそんなことを……」
瑠雨図さんはさめざめと泣きはじめました。
ずんずん先生は、社会人がかかるという謎の奇病・社会人病を専門とするメンヘラ産業医でしたが、メンヘラという言葉狩りの厳しい昨今、チーフ社内政治オフィサーという、社内政治のプロフェッショナルに転向したのでした。
瑠雨図さん「でも、言い方っていうのがあるじゃないですか……。もうちょっとこう……オブラートにつつんで……」
ずんずん先生「なに? こう……瑠雨図ちゃん、最高! よく頑張った! でももうちょっとこうしたほうがいいかな? とか言ってほしかったの?」
瑠雨図さん「そう! それです!」
ずんずん先生「ばかちーん!!!」
スパーンとずんずん先生のハリセンが瑠雨図さんの頭に炸裂しました。
瑠雨図さん「い、いったーい! なにするんですか!」
ずんずん先生「そういう甘い考えが、今のあなたの状況を作り出してるのよ!」
瑠雨図さん「うぅ! 傷付いた心にさらに追い打ちを!!涙」
ずんずん先生「だいたいね、会議って始まる前から終わってるのよ」
瑠雨図さん「え? 始まる前から終わっている? ずんずん先生、何言ってるんですか?」