悩む暇があったら小さく始めよ!「リアル・オプション」の考え

企画がなかなか通らない。若手編集者の悩みを打ち明けられる美鈴。企画自体はおもしろそうだが、新規企画にはリスクもつきまとう。そこでふとひらめいた案に石島は太鼓判を押す―― 平凡な女子高生が、青春を賭けて、出版社立て直しに挑む。ビジネス教養が一気に学べる、疾走感満載のビジネス小説、第22回!

なかなか企画が通らない

「美鈴社長、やはりここにいましたか。捜したっす」

そう言って美鈴の隣に座ったのは、編集部でいちばんの若手社員・甲本。営業部の榎本から「社長なら三毛猫茶房にいるだろう」と聞いて訪ねてきたという。

甲本は、入社3年目の25歳。最初は先輩から引き継いだ本を担当しながら編集のイロハを学び、ここ1年ほどは自分の企画を積極的に提案している。

だが、なかなか企画が通らない、ということは編集長の田之上から聞いていた。

口では大きなことや正論をいうが、実際には行動力がないという短所がある。そのため、社内でも「また偉そうなこといって」とまともに相手にされていない面があった。「発想は面白いんだけど、いまいち信用できない」というのは、編集長の田之上の弁だ。

「いったいどうしたの?」

美鈴は、会社で年齢がいちばん近いせいもあって、ふだんから甲本にはため口だ。

「実は相談があるっす」と甲本。

森下書房のロングセラー本である『中学生でもわかる哲学教室』のマンガ版を企画したのだが、編集長が首を縦に振ってくれない、というのが甲本の相談だった。

「これ、絶対イケると思うっす。編集長では話にならないから、社長にしようと思ったんすよ」

甲本から企画趣旨をくわしく聞くと、たしかに面白そうだ。ベストセラーのマンガ版というジャンルは書店でも確立されていて、データ上では多くの作品が一定レベルの売れ行きを示していた。

「でも、うちはマンガ本をつくったことないし、売れるかどうか確信をもてない、って編集長は反対ばかりっすよ」

甲本は口をとがらせた。

「私は面白いと思うけどなあ」

甲本の作成した企画書をめくりながら美鈴はつぶやいた。

「さすが、社長っす。編集長はセンスがないっす」

「マンガならスマホでサクッと読めるしね」

「あ、俺もマンガはスマホ派っす。電子書籍は持ち歩かなくていいし、便利っすよね」

「そうね。この企画も電子書籍にするんでしょ?」

「そうっすね。ただ、紙の本を出してしばらく経ってからになると思うっす」

「そうなの?」

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女子高生社長、ファイナンスを学ぶ

石野雄一

小さな出版社の社長だった父の突然の訃報。 あとを継ぎ、社長に就任した女子高生の美鈴。 しかし会社は倒産寸前。銀行への返済期限は3ヵ月。 「出版不況」「返品の山」「使えない編集者」。 次々と難題が襲い掛かる。途方に暮れる彼女の前に 現れ...もっと読む

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