ジャーナリストが美人チェリストのリサイタルに来た「真の目的」

「受注数世界一の、殺しの会社を創りたいんです」
女子大生、桐生七海は本気だった。「営業」ができない、「広告」も打てない、「PR」なんてもってのほか、世界一売りづらい「殺し」をどう売るか――、そんな無理難題を「最強のマーケティング技巧」を持つ西城に弟子入りすることで解決しようとする七海。今話題の書店経営者が初めて書く新しいマーケティング&エンタメ小説、第3回。

エントランスには、逆光の中でチェロを弾く美しい女性が大きく写し出された巨大な垂れ幕が掲げられていた。

『山村詩織リサイタル』

秋山はまだ痛む左頰を撫でながら、その垂れ幕を見上げていた。

「なんで私だけ体を触られなければならないのよ!」

仁王立ちになって、屈強な黒服たちに食ってかかっているのは、響妃だった。手荷物検査場で、秋山はすんなり通されたが、どうやら、秋山を殴ったことで響妃は危険人物と認定されてしまったらしい。

「ですから、そういうことでなく、ボディーチェックです」

黒服の警備員が懸命に説明しているが、響妃は聞く耳を持たない。

「一緒よ! セクハラよ!」

いつものことだ、と秋山は割り切って、垂れ幕を見ていた。

最近、山村詩織は美人チェリストとして、テレビや雑誌等に出ることが増え、熱狂的な男性ファンが多いことでも知られていた。

憂いに満ちた表情で、まるで痛みに耐えるかのように音を奏でる姿がたまらない。 そう、何かの番組でニュース・キャスターが拳を握りしめて力説していたのを秋山は思い出した。

たしかに、美しい人である。儚げでもある。

だがしかし、今日、秋山がここに来た本当の目的は、美人チェリスト山村詩織の演奏を聴くためではなかった。滅多に表舞台に姿を現すことのない、ある女性に会うためだった。

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殺し屋のマーケティング

三浦崇典

「受注数世界一の、殺しの会社を創りたいんです」 女子大生、桐生七海は本気だった。「営業」ができない、「広告」も打てない、「PR」なんてもってのほか、世界一売りづらい「殺し」をどう売るか――、そんな無理難題を「最強...もっと読む

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