美女入門

靴や服が発するパワーを御せるかどうかは、自分自身にかかっている。

「美女入門」アンアン連載1000回を記念して、シリーズの第1回から特別連載。時間が経ってもまったく色褪せない、マリコの名セリフの数々。たっぷりご堪能ください。第3話は、1997年10月31日号掲載「マリコ式ファッション再生術」。最新刊『美女は天下の回りもの』と、文庫『美女千里を走る』を2/8同時刊行! 発売中のアンアンの「林真理子特集」もお見逃しなく。

 買い物好きの私といえども、シーズンごとにお洋服をぜーんぶ新しくするなどということはあり得ない。昨年のものを取り出して、どうやったら今年っぽくなるか、あれこれ思案するわけだ。

 去年の秋、偶然のこととはいえ茶色のベロアのジャケットを買った。ところがそれは今年の必須アイテムである。これまた偶然であるが、パリのプラダで、パープルのニットも買ってある。言うまでもなく流行色である。こういう風に、買ってあるものがどんぴしゃりと決まると苦労はないのであるが、頭をひねるのが、一年という歳月によって何とはなくみすぼらしくなってしまうものたちですね。

 ぶっといヒールのミュウミュウの靴は、果たして生き残れるのであろうか。ひと頃、ビタミンカラーとかいって持てはやされた鮮やかな色は……?  まあ、たいていの人がそういうことをするであろうが、私は鏡の前でコーディネイトごっこをしてみる。私はうんと昔に、四角い業務用の鏡を買って、十数年以上愛用しているのだ。この大きな鏡だと、上から下までちゃんと映る。が、まだ油断はならない。今度は玄関へ行き、靴を履き、壁にはめ込まれた鏡で最後のチェックをする……。

 とここまで書き、我ながら恥ずかしくなってしまうではないか。努力している割には、私のコーディネイトは今ひとつ決まらない。まわりのおしゃれな人とか、ファッショナブルな人たちと比べてみると、アカ抜けてないのは歴然としている。これはひとえに、私のだらしない性格によるところが大きい。

「そうだ、このあいだ買った茶色のブラウスと合わせよう」

 と思っても、クリーニングに出していないことがある。

 それよりも問題なのは、私の体重の増減の激しさであろう。私はちょっとダイエットの手をゆるめると、すぐに五、六キロ太ってしまう。
 つい先日のこと、原稿を取りに来たテツオが、私を見て珍しく誉めてくれた。

「おっ、ノータックのパンツが決まってるじゃん」

 その時私は、お腹のへんにちゃんとタックが入っている三年前の古いパンツをはいていた。が、どうも左右にひっ張られてそれが消えていたらしい。

「すげえ体型……。古いパンツも最新のやつに変えるんだから」

 とテツオは感心したり、驚いたりしていた。

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美女入門

林真理子

ついに1000回を迎えた、アンアン連載「美女入門」。1997年の第1回には、こんな一文があります。「キレイじゃなければ生きていたってつまらない。思えば私の人生は、キレイになりたい、男の人にモテたいという、この2つのことに集約されている...もっと読む

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