田園都市線のラッシュよりはマシ

このたび、cakesの連載「シロウト夫婦のズボラ菜園記」が『シロウト夫婦のきょうも畑日和: 家庭菜園はじめました』として書籍化されました! 今回はその発売を記念して特別編をお送りします。知り合いのUさんからもらった大量のニラの苗。新しい住まいでニラたちはどんな目にあうのでしょうか!?

これを育ててみないかい?

早春のある日、ゴルフに行っていた夫が、何やら持って帰ってきた。根っこを生やした土の塊が、カゴいっぱいにつまっている。

「Uさんからもらったんだよ」

その方は夫の友人のお父上で、ゴルフも好きだが家庭菜園も趣味。軽トラをセカンドカーにしているほどの、本格的な菜園家だ。私は会ったことがないが、夫は縁あって、よく一緒にゴルフに行く。その日も車でご自宅まで迎えにいくと、

「金田くん、これを育ててみないかい?」

と、その妙な物体をくれたのだという。

それは、大量のニラの苗だった。


元のご主人を呼んで「帰りたい帰りたい」と泣いているようです。

「これを植えつけると、そのうちニラが出るんだって」

「それはわかるけど、どう考えても、増えて困ったニラをおしつけられたってことだと思うよ、これは」

自分の畑から掘り出したニラの根っこであることは明らかだ。

「こんなにニラばっかり作ってどうするの? 餃子店でも始める気?」

私は、ゴルフバッグとニラ苗を抱えた夫を、玄関先でにらみつけた。

「しょうがないでしょ。せっかくくださるものを、断れないんだから」

Uさんは、庭でとれた柿や蜜柑もたくさんくださる、我が家に欠かせない季節の使者だ。柿は喜んでいただくのに、ニラはいらないとは確かに言えない。

「でも、どこに植えるの? 場所がないよ」

我が畑にも、すでにじゅうぶんニラが生えているのである。


たびたびの引っ越し

ニラには、多少の思い入れがある。

菜園家になって最初にまいたタネの一つがニラなのだ。

細い芽がポリポットの土から顔を出したときは、「ニラが立った! ニラが立った!」と、赤飯を炊きそうな騒ぎだった。


「めでたい」とは、「芽が出た」ときの喜びからきているんじゃないかと、本気で思ったくらいです。

植えつけた苗はぐんぐん伸び、やわらかそうなニラに育った。

ニラは、一度植えれば、植えっぱなしで数年収穫できる。根元を数センチ残して切ると、そのうち新しい芽が伸びてきて、再び収穫できるのだ。

地下では株が成長し、伸ばす葉の数も増えてくるし、秋にはタネが落ちて勝手に発芽する。


ニラのタネです。インスタ映えする愛らしさです。

なんの世話をしなくてもそこそこ成長するので、私はすぐにニラを育てているということを忘れてしまった。ニラは草と同じだと思ってしまったのだ。

そのせいで、我が畑のニラはひどい仕打ちを受け始めた。水ももらえない。肥料ももらえない。おまけに、しょっちゅう引っ越しをさせられる。

もともと、ひと畝(うね)全部育てるほどは食べないので、畝の端っこを間借りしているニラだったが、その場でほかの野菜を育てたくなると、邪魔になるのである。

「さあさあ、また引っ越しですよー」

私はニラの根元にスコップをつきさし、土ごと持ち上げて別の場所へと移動させた。

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シロウト夫婦のズボラ菜園記

金田 妙

毎日、採れたての新鮮な野菜が食卓にのぼる。そんな生活に憧れる人は多いのではないでしょうか。自分で野菜を作れればよいけれど、畑はないし、仕事は忙しいし、週末は遊びたいし…。それでも、思いきって家庭菜園の世界に飛びこんでみたら、おもしろい...もっと読む

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コメント

tomshirai 今もそんなに混んでるのか…。 13日前 replyretweetfavorite

muku_dori_ 書籍化おめでとうございます 15日前 replyretweetfavorite

mwktk2 プラーザなニラ笑 17日前 replyretweetfavorite