私は絶対に養われて生きていきたい
結婚する前から、「もしもいつか結婚をしたら、そのときは夫となる人のお給料だけで生活をする」ということは決めていた。
私の稼ぎがどうであろうと「私は絶対に養われて生きていたいの!」という方針であることは伝えた上で結婚をしたから、家賃とか光熱費とか水道代とか食材費とか日用品とか、暮らしていくことにかかるお金は全て彼の稼ぎから払うのが我が家のルール。彼のお給料=家庭のもの、家計のお金、というスタンス。
なぜ絶対に養われて生きていたいのか、というと、理由は二つ。
まず、私の稼ぎありきで家庭を作ってしまうことはすごく危険だからだ。下田美咲業は計画的に稼ぐことができない。固定給や時給の仕組みもないし、どれだけ稼げるようになっても、会社勤めをして昇給を積み重ねてきた状態とは違うから、来月はゼロの可能性が常にある。
私の月収は毎回「今月は、たまたまその金額だった」だけで、来月以降のことはいつだって白紙だ。オファーがなければ働くことさえできないし、どれだけ原稿を書いてもそれを他人から「読みたい!」と思われなければ1円にもならない。私の仕事は、下田美咲を材料に商品を作って値段をつけることだけれど、それを買ってもらえるかどうかは世に出してみるまでわからない。常に「結果的にタダ働き」となるリスクを抱えている。私には「結果的に稼げた!」という稼ぎ方しかできない。
そんな不確かなお金を家計に合算して家庭を作ってしまったら、私が無収入になったときにその家庭はどうなるのだろう、と思う。家計の崩壊はそのまま家庭の崩壊につながる。子どもを産む以上、家庭は確実に維持していけるやり方とサイズ感で作っておきたい。
正直なところ、ここ数年の私の稼ぎは多くの男性の数倍ある。私の収入で家計を回せば、もっといい家に住めるし、子どもをどんな学校にでも入れてあげられるし、高級な食材を買い続けても大丈夫になる。だけど、私の稼ぎをアテにして暮らしを作ってしまうと、突然にグレードダウンするしかなくなる日がくる可能性がある。それは子どもの心や実生活をすごく振り回してしまう。
だから、基本の家計は彼の収入だけでやりくりすると決めている。彼のお給料の範囲内で成立するサイズの暮らし方をしておく。彼のお給料も100%保証されたものではないけれど、私の不安定さと比べたら、かなり確かなものでアテにできる。
もう一つの理由としては、「生活費を稼がなくちゃいけない立場になるのは絶対に嫌だ」と昔からずっと思っていた。生きていくためにがんばって働く、という生き方をしたくない。働かないと食べていけない、家賃を払えないと住むところがなくなる、という立場になったら、不本意な仕事でもやらなきゃいけなくなってしまう。私はそれがどうしても嫌。
だから、独身時代は親に対して「私のことは、そっちの一方的な希望で産んだのだから養う義務があるよね。養ってね!」というスタンスを貫いていたし、結婚するなら夫に養ってほしいから彼に対して「私は養われて生きていきたい女だよ」と宣言をした。
生きるために嫌な仕事をしなきゃいけないのなら、生きていたくない
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