マジメなドイツ人、乗っかり上手なイギリス人。最後にちゃぶ台をひっくり返すのは……?

現役官僚の滞英日記』の刊行を記念した特別連載、今回は「乗っかり上手なイギリス人」がテーマです。欧米の人たちは議論に積極的であるというイメージが持たれがちですが、実はイギリス人は議論では自分からアイディアを出さないことが多いのだそうです。橘宏樹さんが現地で見た、ズルくて乗っかり上手なイギリス人、それに追い詰められるドイツ人、さらにはイギリス人ドイツ人ともにコントロール不能なある人々の様子を克明にレポートします!

乗っかり上手なイギリス人

 イギリス人は、乗っかること、人にやらせることが上手だと思います。もちろん個人の行動様式を人種や国籍によって一概に分類するのは危険ですが、それでも大学のグループワークや遊びの中で観察される範囲では、少なくともイギリス人とドイツ人の間には鮮やかな傾向の違いが見え、その関係性には着目すべき点があると思います。

 まず、イギリス人(特に白人系)は自分から作業を申し出ることがほとんどありません。僕の接したイギリス人たちは、分担を押し付け合う話し合いの際には、だいたい黙ってニコニコしており、最も緩くてテキトーなスタンスから調子のいい相槌を打っています。方向性に関わるような提案はあまりしません。

 金融や言語、評価基準など、スタンダードを押さえることに長けたアングロ・サクソンのイメージからすれば、率先して最も自分に都合のいい提案をし、先手先手を打っていきそうなものですが、この点は意外に思いました。と同時に、顔つきからはアイディアが本当にないとは思えないところが不気味です(逆に、アイディアがなくても、ありそうに見せているだけなのかもしれませんが)。そして議論が進まず埓が明かないなあ、という空気が(南米系の学生にすら!)漂い始め、提案や負担の申し出が始まると、イギリス人は「いいね! じゃあそうしよう!」と自分に負担がないものであれば、即座に乗っかってきます。

 そして「やっぱり、提案者の彼(女)がそれをやるのが最適だと思う!」とのたまうのです。言いだしっぺも疲れていますし、早くここを立ち去って友達と遊びたいし、イメージも湧いている作業なので、引き受けます。

 おおお、ズルい! ズルいのです。しかしこの作戦を実践できるのは、なかなか話が進まない時間が与えるストレスに強いからだと言えると思います。何が本当に面倒くさくて、何が実は面倒くさくないか。この場の議論が長引いても、負担を持ち帰らないで済む方が楽だという判断から動かないのです。合理的だと思いますし、それを可能にする忍耐力が素晴らしいのです。

どんどんイギリス人に追い込まれていく、マジメなドイツ人

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現役官僚の滞英日記──EU離脱にも揺るがない、英国エリートたちの生存戦略

橘 宏樹

欧州最古の名門総合大学「オックスフォード」、英語圏最高峰の社会科学研究機関「LSE」の両校に留学した若手官僚が英国社会のエートスをリアルタイムに分析。大英帝国が没落してなお、国際的地位と持続的成長を保ち続けるイギリスに “課題先進国"...もっと読む

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コメント

tomshirai あはは、思い当たるふしあるなぁ。 4ヶ月前 replyretweetfavorite

ikb 『定義をはっきりさせたり規則をきっちり守らせようとしたりし… https://t.co/NNdpjt1in0 4ヶ月前 replyretweetfavorite

AliceArisugawa おもしろかった → 4ヶ月前 replyretweetfavorite