記帳主義経済とは何か?

モノをお金でやり取りする“資本主義”から
コトを時間でやり取りする“時間主義”
モノを信用で直接やり取りする
“記帳主義” 最後にコトを信用でやり取りする“信用主義”へ ー。
今、お金を中心に大きな転換が起こっています。
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 時間主義経済と並行して記帳主義経済も浸透してゆきます。生活必需品の費用の逓減が記帳主義経済へと移行させる経済の変化でも述べましたが、衣(医)食住を中心とした生活必需品の費用は下がり続けます。費用逓減が続いた先にあるのが、モノ同士をお金を介さずに交換してゆく記帳主義経済です。モノが直接やりとりされ、ブロックチェーンなどの技術によってやりとりされた物品がそのまま個人の台帳に記帳されます。そこでお金は使われません。

 ヤップ島のフェイの話を思い出してみてください。フェイではお互いにあげたもの、もらったものを記帳していったのです。それが全世界的に広がっているのが記帳主義経済です。ミクロネシアの小さな島から始まった原初的なお金のしくみが世界全体を覆い尽くした姿が記帳主義経済の世界です。

 全員がバランスシートに記載する分散型台帳型になる

 記帳主義経済では一人一人の取引がすべてデジタル台帳に記帳され、それがすべての人に共有されるため、改ざんが不可能になります。騙したり隠したりができなくなり、一人一人の与えたもの貰ったものが明確になるため、価値を生み出し信用を構築していくことが必要になってきます。

 近年、アダム・グラントが書いた『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』(三笠書店)はとても面白い現象を示唆しています。グラントは、まず世の中には、「ギバー」「テイカー」「マッチャー」の三種類がいると述べています。

 ギバーは、Give & Take の関係を、相手の利益になるようにもっていき、受けとる以上に与えようとするタイプです。他人中心にものごとを考えて、相手がなにを求めているかに注意を払います。相手と価値を交換することではなく、関係性全体の価値を増やすことを目指します。

 テイカーは、Give & Take の関係を、自分の有利になるようにもっていき、より多くを受けとろうとするタイプです。自分中心にものごとを考えていて、相手の必要性よりも、自分の利益を優先します。テイカーにとって、世の中は、食うか食われるかの競争社会であり、用心深く、自己防衛的です。

 マッチャーは、与えることと、受けとることのバランスを取ろうとするタイプです。公平という観点にもとづいて行動していて、人を助ける時は、見返りを求めることで、自己防衛し、相手の出方に合わせて、助けたり、しっぺ返ししたりします。著者の調査によると、職場では、ほとんどの人がマッチャーのタイプになります。

 どのタイプが成功するかということですが、最初の段階ではテイカーが富を得ます、しかし最終的にはギバーが成功するということです。マッチャーの人生はそこそこで終わります。面白いのはテイカーは富を失うか、成功するか両極端にわかれるという点です。しかしこれは過去の話です。これから到来する本格的な記帳主義時代には誰がギバーで誰がテイカーなのか一目瞭然となり、そうなれば他者に価値を提供し続けるギバーが成功に一番近くなるのは当然の帰結でしょう。

 バランスシートにモノが記載され価値が均一ではなくなる

 記帳主義時代のもう一つの大きな特徴はお金を使わず記帳し続けるということです。面白いのはその個人台帳(バランスシート=総勘定元帳)を誰が見るかによって価値の見え方が変化するという点です。バランスシートに金額が記載されている資本主義経済では誰の目から見ても富の多寡は明らかです。ですが、物品が記載されているバランスシートはそれを見た人の価値観や趣味・嗜好、今欲しいものによって相手の価値が変化するのです。価値が伸縮する点は時間通貨に似ています。

 例えばAさんが「パイナップルを貰い、ヤシの実を与えた」ということが、バランスシートに書いてあるとします。パイナップルが欲しいBさんがこのバランスシートを見たとすると、パイナップルを持つAさんのバランスシートは価値が高いです。しかし、ここをヤシの実が欲しいCさんが見ると何の価値もありません。このように、人への評価が今よりもずっと多様化してゆくのです。(イラスト参照)


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yamaguchiyohei なぜお金という「中間媒介」がなくなっていくのか?について書きました。 https://t.co/p8Lij7q6vf 9ヶ月前 replyretweetfavorite