原点は「オタク第一世代」
——尾関憲一さんは『ブラタモリ』のプロデューサーだけでなく、『熱中時間』や『東京カワイイ★TV』、『天才てれびくん』にも関わられたそうですね。
尾関:はい、そうです。
——番組はいわゆる「王道」からは離れた「脇道」にスポットを当てた企画が多いように感じますが・・・?
尾関:そうですね。僕自身はサブカルも好きなんです。とくにアニメやマンガからの影響が大きいですね。中学生のころにアニメ専門誌の『アニメージュ』が創刊されたり、劇場用のアニメが公開されはじめたりした、いわゆるオタク第一世代にあたると思います。
——「オタク」というコトバが一般的になる前ですね?
尾関:ええ。他にも『宇宙戦艦ヤマト』、『銀河鉄道999』、『ドラえもん』の劇場版第一作の『のび太の恐竜』が、中3のときだったかなぁ?
ゴジラやガメラの映画も好きだったし、ガンダムのプラモも並んで買ってました。
——かなりコアですね(笑)。
尾関:でも中高生ぐらいでそういうことばかりやってると、親に「おまえ、なにやってんだ?」って言われたりして(笑)。いまはそういう趣味も当たり前ですけど、あのころは“卒業しなきゃいけないもの”みたいな考え方があったんですよね。
——そのあたりに仕事の「原点」がある・・・?
尾関:どうでしょう? ただ、アニメやマンガ一本だったわけじゃないんです。スポーツも普通にやってたし、本も大好きだったんですよ。いまでも小説からノンフィクション、ビジネス書、スピリチュアル系まで目を通しています。本だけじゃなくて「書店」も好きです。並んでる本を見ると、いまの人が求めてるものがわかるんです。本って、「最先端」ではないですよね。ネットのなかには最先端がありそうですけど、そのなかで一般化されたものが書籍。だから「ああ、こういうものが受けるのか」っていうことが、より明確に見えるんですね。
企画を自分だけの世界にしない
——その好奇心の広さが、お仕事に活かされている?
尾関:そうかもしれません。まずは、自分が本当におもしろいと感じるものを探し出せるかどうかが大切だと思います。自分が本当におもしろいと思えれば、企画会議でも説得力を持って伝えられますから。
逆にいうと、情報だけをつかんで「おもしろそうだ」と言っても、それは受け売りにすぎませんからインパクトが薄いんですよね。
——面白さを伝える以外で気をつけていることはありますか。
尾関:番組にする際に重要なのは、企画を「自分だけの世界にしない」っていうことです。「どこがどうおもしろかったのか」をうまく抽出しないと、結果的につまらなくなってしまうからです。オタク度の高い人が好きなことだけやると、番組がマニアにしかわからないことだけになっちゃう場合があるんです。ネットの世界ではいいのですが、不特定多数の人が観るテレビとしてはおもしろくないんです。だから、そこのバランスには気をつけています。自分を刺激した“おもしろい要素”がなんだったのか、そこをうまく伝えるようにしているわけです。
——そうすると、おもしろいと感じたものを、アイデアのレベルに昇華するポイントはどこに?
尾関:「いまの世のなかに受け入れられそうで、しかも他ではやっていない」っていうところですね。それから、演出や仕掛けによってではなく、ジャンルやネタそのもので興味を持ってもらえるものをやってみたいと思っています。
——では、アイデアを具体的なかたちにしていくためには、どうしたらいいのでしょうか?
尾関:ひとつは、それを切り取れるだけの“いい人”を見つけることですね。独特の世界を一般の人に翻訳できる能力を持っている人。
淡々と映像で追っていくだけだと、どうしても食いつきがよくない。テレビってどうしても、出る人の力で引っ張ってくところがあると思うんです。有名な人でも素人さんでもいいんですけども、テレビ向きにそれができる方ですね。
(後半に続く)
『時代をつかむ! ブラブラ仕事術』(著者:尾関憲一)
(フォレスト出版、税込み1,470円)