まず若い読者に、昔のことをちょっとお話しましょう。「アンアン」にこのコラムページが出来たのは十四年前、私の連載が初めである。「南青山物語」「マリコ・ストリート」と続いたコラムはとても評判がよく、おかげさまで私は、
「『アンアン』を後ろから開かせる女」
と異名をとったもんさ。私の相棒といおうか、疑似恋人の役割を果たしてくれた編集者のテツオは、全国的な人気者となりどこへいってもモテモテだったそうだ。あれから歳月は流れ、恋多き女だった(?)私もついに人妻となった。けれどもミーハー精神といおうか、フットワークの軽さはあんまり変わっていないつもり。テツオは相変わらず独身のまま、私が離婚するのをひたすら待っている(ウソ)。ハンサムで有名だった彼は、年をくった分ますますよくなった。派手なイタリアン臭が抜けて、じっくりと渋くおしゃれな男になったじゃないの。しかしもう若い人の中で、テツオの名を知る者は少ない。
ところで話は突然変わるようであるが、このあいだまで、アンアンでこのコラムを書いていた柴門ふみさんが最近めっきりキレイになった。もともと目鼻立ちの整った人だったが、この頃着るものもメイクもぐっとあかぬけてきた。流行のものをさらりと着ている。
「テツオさんのおかげよ」
と彼女は言う。
「アンアンの連載が始まった時思ったの。これからテツオさんにいろいろ教わって、うんとおしゃれになろうって」
まず美容院を、テツオいきつけのところに変えたそうだ。シャギーを入れたショートに、赤いメッシュをかすかに入れてカッコいいぞ。いいな、いいな、と私は思った。やはりアンアンとテツオの威力はすごい。女の人をこんな風に変えることが出来るんだ。頼まれていた連載を私もやることによって、ちょっと変身することが出来るかしらん。
この年になって私はつくづくわかった。女はキレイじゃなければダメ。キレイじゃなければ生きていたってつまらない。このキレイというのは、何も生まれついての美人というわけじゃないんだ。センスを磨き、腕を磨き、体も磨いている女のことを、私はキレイなコと呼ぶ。思えば私の人生は、キレイになりたい、男の人にモテたいという、この二つのことに集約されているような気がするのだ。
結婚する前はずうっと思っていた。夫が出来たら、モテたい、男の人からちやほやされたい、などという考えがすっかり無くなるだろうって。ところがそんなことは全くなかった。結婚していても、ステキな男の人のことは気になるし、その人から好意を持ってもらいたいと思う。その人が別の女の人に声をかけたりすると猛烈に腹が立つ。が、結婚しているというのはいいもので、
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