東京理科大学の葛飾キャンパス (筆者撮影)
4月27日、東京都葛飾区新宿(にいじゅく)で、東京理科大学の新キャンパス開設の記念式典が行われた。新しいキャンパスは、葛飾区といってもほぼ松戸市との境の、水と緑に恵まれた広々としたところにある。
キャンパスには柵や塀がない。住民とのふれあいが目的とされているからで、このたび、葛飾区も大学に隣接するように新しく、「葛飾にいじゅくみらい公園」や、子どもが科学に親しめる「未来わくわく館」などを作った。まさに理科大と地元の、町づくりコラボレーションである。というわけで4月27日は、理科大の式典だけではなく、この町の新たな成長を記念するお祭りでもあったわけだ。
葛飾といえば「寅さん」に象徴されるように、下町人情の溢れる土地柄といわれている。区長の青木克徳氏によると、近隣の多くの人々が、キャンパスの開設を楽しみにしていたらしい。「自然豊かな環境の中での学生生活が有意義なものになるよう、区を挙げて最大限にバックアップする」と言い、それによって、この町が文化都市として発展していけば、お互いに得るところが多いはずだ。最寄りの金町駅から大学に続く商店街は、このたび「理科大通り」と名付けられた。
当日は快晴のお祭り日和で、その理科大通りを、人々が三々五々歩いていた。大学内での式典では、日本を代表するような科学者や大学関係者が集う一方、外の敷地には町の人々が集まり、地元の商店のテント村やら、大小さまざまなイベントやらで賑わっていた。どこかで踊りのイベントもあるのだろう、おそろいの浴衣を着た地元の年配の人たちが何組もいたのが実に下町らしく、ほほえましかった。
「ドヴォルザークが聞こえてくるようなキャンパスを」
この日、お祭りを楽しんでいた人たちはおそらく気づかなかったと思うが、この理科大の新キャンパスには、いくつかのアートが隠されている。仕掛け人は、理科大の前理事長、現会長の塚本桓世氏で、彼は、葛飾キャンパスが計画されて以来、ぜひともこの空間に芸術的香りを取り入れたいと考えていたそうだ。そして、最初に設計の担当者と会ったとき、「ドヴォルザークの『新世界より』のメロディーが聞こえてくるようなキャンパスを作ってほしい」と依頼したというから、言われた方もかなり面食らったと思う。
この大学を訪れると、まず250メートルにもおよぶメインストリート、キャンパスモールが目の前に現れ、その先にキャンパスの象徴的存在である巨大な図書館棟が見える。そのキャンパスモールの中ほどに、1つ目のアート、「わだつみのいろこの宮の碑」が立っている。高さ2メートル強、縦長の陶板の碑だ。
徳島県鳴門市に大塚国際美術館という美術館がある。そこでは、礼拝堂を復元したスペースに、「最後の審判」や「モナリザ」などの世界的名画を原寸大の陶板にして展示してある。塚本氏は、これだと思い立った。陶板製なら、屋外に置いても色あせることがない。
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