「午前中だけでお客の案内が3件。その間、生産現場やお客とやりとりして納期の調整をし、午後もアポでびっしり。その間にも電話やLINEで問い合わせがどんどん入ってくる。夜、ようやく会社に戻ると未読のメールが200件くらいたまっているんです。日本語もあれば英語のものも」
目の回るような毎日を送っている丸茂貞二さん(37)の「戦場」は、日系製造業が集積している工業団地だ。タイに進出している日系企業のかなりの部分が製造業だが、その中心で働いている。電子部材を扱う商社の営業マンとして、大手電機部品メーカーや自動車関連の日系企業を飛び回り、部品を供給していく。海外進出する製造業の生命線ともいえる、部品や原材料の現地調達を担う会社だ。
「仕事の相手は日本の企業です。だから日本にいるとき以上に、濃密に仕事をする毎日ですね。タイだからといって甘えは許されません」
タイでの現地採用というと、どこかのんびりしたイメージがあるかもしれない。そこそこの給料で、お気楽なストレスフリーの生活。確かにそんな人もたくさんいるが、丸茂さんの世界は違う。
「うちの会社は日本側も含めてほとんど中途採用なんです。そんな社風だから、日本から来る駐在員と、こちらで入社した現地採用の間にも壁はありません。現地採用は駐在員の下働きではないんです。そのぶん責任も同じだし、仕事量も多いので、きついですよ。でも、働きがいはあります」
チェンマイで学ぶ留学生だった
タイに来たきっかけは大学時代に経験した交換留学だ。タイ北部の古都チェンマイで学んだのだが、そのときに感じたタイの居心地の良さが印象的で、心に残っていた。
日本に戻り新卒で大手旅行会社に就職したものの、チェンマイでの縁から現地の日系旅行会社に転職、そこからタイ生活がはじまった。さらに、タイ北部にはいくつかの工業団地があるのだが、ここに進出している日系企業からオファーを受けた。サービス業から製造業への転身となったが、
「仕事の成果がモノになって明確に出てくる製造業にやりがいを感じました。プリンターの中のひとつの部品を専門に作る工場です。技術が詰まっていて、ここでしか生産できないというものでした。そこで通訳から営業、管理までこなしていました」
しかし、リーマンショックがタイをも襲う。社歴3年未満の社員は国籍実績関係なく、リストラ対象に。国外で失業の危機に見舞われたが、バンコクの関係会社に誘われ、いまに至っている。
スキルのない現地採用は生き残れない!
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