第4回】[STEP 2]原因を特定する

【ベストセラー『世界一やさしい問題解決の授業』の著者 渡辺健介氏が送る特別授業!】
実は仕事や生活の問題を乗り越えるための「ロジカルシンキング」と「問題解決」という方法が存在する。それらを社会人や子供に教える渡辺健介氏にストーリーを基に易しく教えてもらおう。

 「ところで部長、なんで、協力してくださるんですか?」

 不思議に思ったリンカが聞くと、部長は照れながら答えた。

 「実は俺も、先代の社長から同じようなことを依頼された経験があるんだよ」

 「え~! そうなんですか!?」

 「まあ、その時は、君たちに今教えているような、問題解決の方法や考え方を身につけてなくてね。成功とは言い難い結果になってしまってね。ま、その時のリベンジみたいなもんかな」

 「そうなんですね……。ありがとうございます!」

 「いやいや、まだ解決してないからね。さあ、目標と現状のギャップを明確にしたら、次は“なんで?”と問いかけて原因を探る、ステップ2だ」(下図参照)

 話しながら、もう一度、ホワイトボードのほうに向いて、腕組みをする部長。突然、二人のほうに振り返りながら、こう問いかけてきた。

 「なんで? 運動会に人が来ないのはなんでだと思う? 直感で! サトシくんどうぞ!」

 「え? 俺!? えっと、その、知らなかったからだと思います! 運動会の存在を知らなかったから。なんでかというと、去年、僕の同期の男性は運動会が終わった後に、“そんなのやってたの!?”と言ってました!」

 「うん、なかなかいい仮説だね。じゃあ、なんで、知らなかったんだと思う?」

 「それは……。社内報って時々しか来ないし、そもそもあまり見ないし。社内の掲示板も忙しいと素通りしてしまうし……」

 「うん、なるほど。リンカさんはどう思う?」

 「はい。私は去年入社していませんでしたが、去年の社内報のPDFを見ると、かなりスクロールしていかないと、運動会の告知にたどり着きませんね……。わかった! 認知率が低いことが原因なんですね!」


 「うん。でも、まだ決めつけちゃいけないよ。だいたいでいいから、どれくらいの人が運動会を知らなかったのか仮説を検証したいなあ。二人の社内の知り合いに聞いてもらえないかな」と部長。

 「あ、ちょっと待ってください、ちょうど、今日、僕の同期20人が飲み会をしているので、その場で、去年の運動会開催を事前に知っていた人が何人か聞いてもらいます」。サトシがスマートフォンで何かを打ち始めた。

認知率だけが問題!? 「他には?」が大事

 しばらく、LINEのやりとりをしていたサトシが、結果を部長に報告しつつホワイトボードに書き始めた。「20人のうち知っていたのは8人だけだったそうです。やっぱり、問題は認知率でしょう!」

 「そうね、私も認知率に問題ありだと思う。社内報の担当者にかけあいましょう!」とリンカも、賛同する。

 まずは直感や経験則を生かして仮説を持つことは重要だ。しかし、その仮説が真の原因と早急に決めつけてはいけない。このようになるべく事実に基づいて検証すべきなのだ。

 「認知率に問題アリ。そこに気づいたうえに、簡単だけど事実で検証した。うん、二人とも1時間前よりは進歩しているな。でも、認知率以外には問題はないのかなあ。少し視野が狭くなってないかな」

 サトシが少し不満げに反論する。「だって、これだけの数の人が知らなかったわけですから」。

 部長が子供を見つめるような温かい眼差しでサトシに答える。「しかし、20人のうち8人、つまり40%が知っていたわけだよね。でも、現状の参加率は10%。開きがないかい? おそらく、“知っていたけど行かなかった”という他の層もいたはずだよね。よし、ここで分解の木に登場してもらおう」。

 「分解!? 木!?」。二人がまたも、異口同音に驚く。

 分解の木という便利なツールがある。ロジック・ツリーとも呼ばれる(下図参照)。

 この木を使えば「他には?」や「具体的には?」などと問いかけることによってモレなく、具体的に要素を洗い出すことができる。

 そして、上下左右の配置にはルールがある。下図のように、〈左から右〉は「具体的には?」という関係になり、〈右から左〉は「まとめると?」で、〈上下〉は「他には?」という関係になる。作るときにはそれを意識しよう。

 例えば、「運動会を知らなかった人が多いこと」を直感で挙げた後に、「他には?」と問いかけることにより、「知っていたけど、行かなかった人が多い可能性」も見えてくる。

 さらに、「具体的には?」と問いかけ、原因の原因を深堀りしていく。例えば、「行きたかったけど、行けなかった」で留まることなく、「具体的には?」と問いかけることによって、「場所が不便」や「日時が合わなかった」などと原因が具体化していく。

 つまり、決めつける前に3分でもいいので「他の原因の可能性がないか?」と問いかけ、何か見落としていないか確認したり、「具体的には?」と問いかけ、原因の原因を深堀りしてみよう。いってみれば、「なんで?」を繰り返すのだ。

 分解の木を作ることで、狭くなった視野が広がっていく。

 部長と二人は、1時間ほど話し合い、分解の木を作っていった。

 「こうやってみると、『そもそも運動会のことを知らなかった』は認知率、『知っていたけど行かなかった』は参加率の問題と分けることができそうだね」

 「たしかに! やった~!」と、喜ぶサトシ。しかし、部長は「いやいや、これからだよ。ここまでは可能性を広げた段階。これから真の原因がどれかを絞っていく必要がある。その特定は、事実に基づかなければならない」。

 分解の木で原因の可能性を広げた後、真の原因を特定する。つまり絞り込む必要がある。そして、そのためには、事実に基づく(ファクトベース)検証が始まるのだ。

 しかし、アンケートとインタビューを全社員に実施するほど、頭でっかちに捉える必要はない。必要十分な数の人たちを対象に行えばいいのだ。

 「よし、今日はここまで。よく頑張った。認知率と参加率のどこに大きな問題があるのか明確にしたいね。次回までにそれぞれが知り合いの社員にアンケートとインタビューをしておこう」

 部長は二人をねぎらうとともに、1週間後に再び三人で会う約束をした。そして、その間に他の社員に対してアンケートと簡単なインタビューをすることを宿題にした。

 目的は、認知率と参加率にどのような問題があるのかをはっきりさせることだ。すぐに終わるような簡単なアンケートとインタビューだが、その質問事項の作成には、分解の木の内容が大いに役立っている。

 アンケートについては、30人を対象とした。まずは、去年の運動会を「知っていた」のか「知らなかった」のかを聞く。次に「知っていた」人には、去年の運動会に関して「参加した」のか「参加しなかった」のかを聞く。これで、運動会の認知率と参加率がわかる。そして、満足度を知るために去年の運動会参加者に「楽しかった」か「楽しくなかった」かを聞くこととした。

 その上で、インタビューは「知っていたのに行かなかった人10人」を対象に行う。それぞれ、不参加の理由を聞くことにした。

 これでも立派なファクトベースとなり、自分の直感だけに頼るよりも、ぐっと精度が上がる。

簡単なアンケートでも大きな違いが出る

 1週間後──。結果を持ち寄った三人には大きな発見があった。

 まずはリンカが口火を切った。「認知率だけが問題じゃないんですね。知っていたけど、参加しなかった人からは、こんな声がありました」。

 いわく、もともと運動が嫌い、年を取って体が動かなくなりおっくうになったという、運動自体が苦手な派。また、社内報を見るだけでは、運動会の中身がどのようなものかがわからないという声もあったという。

 リンカが続ける。「それと、去年不参加でも過去に参加したことのある数人の女性から観覧席に日陰が少なくて紫外線が気になって嫌だと言われました」。また、席によっては競技がよく見えないという声もあったという。

 「なるほど。アンケートを見ると……、“楽しくなかった”は65%か! これは問題だな」と、部長が付け加える。

 「最も印象的だったのが、土曜日に開催しているから行きづらいという声でした」と、リンカが言うと「僕のアンケートとインタビューでも多かったです」とサトシが続き、部長も「うん、俺もそうだった。家族がいると、参加しづらいんだろうね。まあ、独身でも、最近は自分の時間を大事にしたいだろうし。この“土曜日問題”は大きく影響していそうだね」。

 部長がホワイトボードに書き込みを始めた。「みんなの調査の結果をまとめるとこんな感じか。知らなかった人が60%というのもやはり大きいな。だけど、75%が知っていてもこなかったのか」(上の円グラフ参照)。

 このように社内運動会を知っていて過去に参加したことはあるものの楽しくなかったり、日程の都合で参加できない人もいる。さらに、参加者からそうした評判を聞いて、不参加を選択する社員もいるのだ。つまり、認知率だけでなく、参加率にも問題があることがわかった。

 仮に「運動会の存在を知らない人が多いことが大きな問題だ」という仮説を鵜呑みにして突っ走っていたら、社内報や掲示板のポスターの内容やデザインのブラッシュアップにだけ時間をかけていたかもしれない。

※ 『週刊ダイヤモンド』2017年8月5日号より転載

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