クリームソーダに400円の価値があれば買う。投資判断も同じだ」

会社のホームページをリニューアルすべきか、しないべきか。そんな経営課題にもファイナンスが役に立つ。身を乗り出して聞く女子高生社長に石島は続ける。投資判断を決定する要素へと話は深まっていく―― 平凡な女子高生が、青春を賭けて、出版社立て直しに挑む。ビジネス教養が一気に学べる、疾走感満載のビジネス小説、第20回!

投資判断はどう決める?

「まずはファイナンス的な観点で、『どのように投資判断を決定すればいいか』という話から始めましょう。そのプロセスは3つです」

そういって、石島は3枚のコースターそれぞれの裏に①、②、③と番号を振った。

①そのプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを予測する

②投資判断指標の計算を行う

③その計算結果と採択基準とを比較し、基準を満たしていれば投資を行い、基準を満たしていなければ投資を見送る

「投資判断でも、やっぱりキャッシュが重要なんだね」

「そうです。プロジェクトや新しい設備に投資するということは、『プロジェクトや設備が将来生み出すであろうキャッシュフローを購入すること』と同じ意味ですから、まずはそのプロジェクトがどれだけのキャッシュフローを生み出すかを予測する必要があります」

「②の投資判断指標というのは何?」

「どの数字を判断基準として採用するか、ということです。代表的な指標に『NPV』という指標があります」

「わかった! No Problem Victoryの略ね」といいながら、美鈴はVサインをつくって見せた。

「それっぽいですが、間違いです。正しくは、Net Present Value(ネット・プレゼント・バリュー)の略です。日本語だと『正味現在価値』といいます」

「惜しかったね!」

石島は無視して続けた。

「投資は、このNPV法を基準に判断するのが最も適切なのです」

「正味現在価値っていわれても、なんだかむずかしそうだね」

「そう感じるかもしれませんが、実は私たちがふだん行っている経済活動と密接に関係しています。簡単にいうと『価格』以上の『価値』があるかを判断するための指標です」

「価格以上の価値?」

「世の中の経済活動は、価値と価格の交換によって成り立っています。つまり、支払う価格よりも価値の高いものを手に入れ続けることが、経済的に豊かになるということです。たとえば、100円のモノを買うとき、それが100円の価格以上の価値があるかどうかを、無意識に判断しています。美鈴社長が飲んでいるクリームソーダも400円の価格以上の価値があると思ったから注文していますよね」

「クリームソーダに400円の価値があるかどうかは微妙だけど、石島さんに相談できることを考えれば、すごく価値が高いと思う」

「それはありがとうございます。会社のプロジェクトや設備投資でも同じです。5000万円しか価値がないプロジェクトや設備に2億円という価格を支払うことはしませんよね」

「そうだね」

「ふだんの経済活動で無意識に行っていることを、意識的にビジネスの投資判断に応用したものがNPV法なんです」

「ということは、NPV法も投資対象の価値と価格を比べるの?」

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石野雄一

小さな出版社の社長だった父の突然の訃報。 あとを継ぎ、社長に就任した女子高生の美鈴。 しかし会社は倒産寸前。銀行への返済期限は3ヵ月。 「出版不況」「返品の山」「使えない編集者」。 次々と難題が襲い掛かる。途方に暮れる彼女の前に 現れ...もっと読む

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