投資判断はどう決める?
「まずはファイナンス的な観点で、『どのように投資判断を決定すればいいか』という話から始めましょう。そのプロセスは3つです」
そういって、石島は3枚のコースターそれぞれの裏に①、②、③と番号を振った。
①そのプロジェクトから生み出されるキャッシュフローを予測する
②投資判断指標の計算を行う
③その計算結果と採択基準とを比較し、基準を満たしていれば投資を行い、基準を満たしていなければ投資を見送る
「投資判断でも、やっぱりキャッシュが重要なんだね」
「そうです。プロジェクトや新しい設備に投資するということは、『プロジェクトや設備が将来生み出すであろうキャッシュフローを購入すること』と同じ意味ですから、まずはそのプロジェクトがどれだけのキャッシュフローを生み出すかを予測する必要があります」
「②の投資判断指標というのは何?」
「どの数字を判断基準として採用するか、ということです。代表的な指標に『NPV』という指標があります」
「わかった! No Problem Victoryの略ね」といいながら、美鈴はVサインをつくって見せた。
「それっぽいですが、間違いです。正しくは、Net Present Value(ネット・プレゼント・バリュー)の略です。日本語だと『正味現在価値』といいます」
「惜しかったね!」
石島は無視して続けた。
「投資は、このNPV法を基準に判断するのが最も適切なのです」
「正味現在価値っていわれても、なんだかむずかしそうだね」
「そう感じるかもしれませんが、実は私たちがふだん行っている経済活動と密接に関係しています。簡単にいうと『価格』以上の『価値』があるかを判断するための指標です」
「価格以上の価値?」
「世の中の経済活動は、価値と価格の交換によって成り立っています。つまり、支払う価格よりも価値の高いものを手に入れ続けることが、経済的に豊かになるということです。たとえば、100円のモノを買うとき、それが100円の価格以上の価値があるかどうかを、無意識に判断しています。美鈴社長が飲んでいるクリームソーダも400円の価格以上の価値があると思ったから注文していますよね」
「クリームソーダに400円の価値があるかどうかは微妙だけど、石島さんに相談できることを考えれば、すごく価値が高いと思う」
「それはありがとうございます。会社のプロジェクトや設備投資でも同じです。5000万円しか価値がないプロジェクトや設備に2億円という価格を支払うことはしませんよね」
「そうだね」
「ふだんの経済活動で無意識に行っていることを、意識的にビジネスの投資判断に応用したものがNPV法なんです」
「ということは、NPV法も投資対象の価値と価格を比べるの?」
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